なつのしっぽ

あききぬと めにはさやかに みえねども かぜのおとにぞ おどろかれぬる

秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる

秋が来たと、はっきり見えはしないけれど、風の音がそれを気づかせてくれたぜ(T藤原)

と、夏の終わりに書きかけのまま放置していたら、気付けば9月もおわり。
朝晩の気温もグッと下がり、秋を気づかせてくれるものは、もはや風の音だけではない。

夏の長い尾尻、ゆっくりと地球の反対側へ去っていき、もうほとんど見えない。
夏よ、さよなら。
そんな今年の夏も、ウチの物件を通じていろいろな人に出会った。

思い出すのが、アーティスト三人衆。
三人のあーちすと、いやアーティストがウチの物件を見に来たというハナシ。

あーちすと‥?

‥余談だが、のんさん(元・能年玲奈?)はこの夏、肩書を「あーちすと」から「アーティスト」に変えたという。
ボクも、彼女が女優(俳優)の肩書に「あーちすと」を書き加えた頃のことを(なんとなく)覚えている。
それ以降の厳しい状況下も、好きなことをやる、とあちこち全力で取り組んできた彼女。
「ひらがな表記で少しおとぼけていた」根拠のない自信は今、確固たる自信に変わったのだと。
だからそのタイミングで「アーティスト」、かっこいいゾ。

話は戻って、我が物件に来られたアーティストたち。
とは言っても、お互いに知り合いでもなく、連れ立ってきたわけでもない。
別々に、でも申し合わせたようにやって来た。

想いを持って、創りだす。
自らを頼りに、勝負する。
専門領域は三人三様でも、
そこは皆、一緒。

彼女たちは、こんなところで創作をしたい、といった。
いったいどこに引っ掛かりがあったのか‥
それは皆、少しずつ違うような気がする。

んー、たった三人?
いやいや、ウチにとっては大きな数字。
だって分母が、うんと小さいんだから。

一方、迎え撃つこちら、もちろんアーティストではない。
つまり、ひらがなの「ふどーさんや」か。
まさに根拠もなければ自信もないんだが。

どうする、おとぼけ「ふどーさんや」。
オマエはどこに向かうのか。
もはや「カ・ン・ジ」の「不動産屋」にもなれないんだろう。

そうだな、カタカナか?
「フドーサンヤに俺はなる!」ってか‥

というより、なんだかヘンだぞ、それ。
カタカナの不動産屋って、なにすんだ?

避暑地にて

窓ガラスの向こうに透けて映る緑。
風景を切り取る白いルーバー。
床には素朴な無垢材が。
ちょっと涼し気‥、どこの別荘なのかしら。

いや、誰もそうは思わない。
「いつもの戯言。どうせ近所のリフォーム物件だろう」
「涼しくないし、汗だくだよね。エアコンも付けてないんでしょ」

果たして‥
おっしゃる通りでございます。

さて‥
この白いルーバーは、これまでにも幾度か登場したウッドシャッター。
つまり木製の建具。
写真は4枚折れ戸となっている。
無垢の羽根一枚を回すと、並んだ羽根も静かに追随する精緻なつくり。
そう、クルマでお馴染みの「ラックアンドピニオンギア」が内蔵されているのだ。
かっちょえー

クラシックな装いに、メカニカルな機構を内包させるなんて素敵じゃないか。
和魂洋才だ(違うな‥)

これまで過去に使ってきたシャッターは、羽根が水平方向に並ぶ横型ルーバー。
今回のそれは縦型ルーバー。
羽根の長さの関係で、横桟が入るのはしょうがない。
だって、びよーんと長くて、ぶらぶらする縦型ブラインドとは違うんだもの‥

ところで縦と横、いったい何が違うんだろうか。

それは見え方だ。
あたりまえじゃないか‥

もちろんそうなんだなー
ルーバーが固定式ならば、縦か横か、傾斜は何度か、によって特性がはっきりする。
ところがウッドシャッターは、くるりと(ほぼ)180°回転するものだから‥

あれを遮ると、これが見えてくる‥
あれを取り入れると、これが消えてしまう‥
朝だとこう、晩だとこう‥
横だとこうなって、縦だとそうなって‥
と、ややこしい。

まあどちらでもよいか。
いずれにしてもウッドシャッターは、
光と風と視線をコントロールする。
うまく3要素を組み合わせて、心地よい室内をつくりたい。

しかし、それ以上に重要な役割があるのだよ、ウッドシャッターには‥

そう、
「近所のリフォーム物件」をたちまち「避暑地」へ連れ去るクラシカルなその姿。
ぬるく湿った風は、高原を抜ける涼風となり‥
ぎらつく陽射しを受け止める羽根の間からは、野鳥のさえずりが‥

‥んなわけは、もちろんないが。
それでも羽根の色、大きさ、ルーバーの縦横などによって、避暑地に行ったり、洋館に忍び込んだりと楽しみ方はいろいろ。
なんなら細めの縦ルーバーを引き戸に仕立てれば、畳敷のお宿風もいいじゃないか。

一枚で部屋の空気を変える(かもしれない)ウッドシャッター。
悩ましいのは、ちょっとアレなこと‥

ご利用は計画的に、ね。