避暑地にて

窓ガラスの向こうに透けて映る緑。
風景を切り取る白いルーバー。
床には素朴な無垢材が。
ちょっと涼し気‥、どこの別荘なのかしら。

いや、誰もそうは思わない。
「いつもの戯言。どうせ近所のリフォーム物件だろう」
「涼しくないし、汗だくだよね。エアコンも付けてないんでしょ」

果たして‥
おっしゃる通りでございます。

さて‥
この白いルーバーは、これまでにも幾度か登場したウッドシャッター。
つまり木製の建具。
写真は4枚折れ戸となっている。
無垢の羽根一枚を回すと、並んだ羽根も静かに追随する精緻なつくり。
そう、クルマでお馴染みの「ラックアンドピニオンギア」が内蔵されているのだ。
かっちょえー

クラシックな装いに、メカニカルな機構を内包させるなんて素敵じゃないか。
和魂洋才だ(違うな‥)

これまで過去に使ってきたシャッターは、羽根が水平方向に並ぶ横型ルーバー。
今回のそれは縦型ルーバー。
羽根の長さの関係で、横桟が入るのはしょうがない。
だって、びよーんと長くて、ぶらぶらする縦型ブラインドとは違うんだもの‥

ところで縦と横、いったい何が違うんだろうか。

それは見え方だ。
あたりまえじゃないか‥

もちろんそうなんだなー
ルーバーが固定式ならば、縦か横か、傾斜は何度か、によって特性がはっきりする。
ところがウッドシャッターは、くるりと(ほぼ)180°回転するものだから‥

あれを遮ると、これが見えてくる‥
あれを取り入れると、これが消えてしまう‥
朝だとこう、晩だとこう‥
横だとこうなって、縦だとそうなって‥
と、ややこしい。

まあどちらでもよいか。
いずれにしてもウッドシャッターは、
光と風と視線をコントロールする。
うまく3要素を組み合わせて、心地よい室内をつくりたい。

しかし、それ以上に重要な役割があるのだよ、ウッドシャッターには‥

そう、
「近所のリフォーム物件」をたちまち「避暑地」へ連れ去るクラシカルなその姿。
ぬるく湿った風は、高原を抜ける涼風となり‥
ぎらつく陽射しを受け止める羽根の間からは、野鳥のさえずりが‥

‥んなわけは、もちろんないが。
それでも羽根の色、大きさ、ルーバーの縦横などによって、避暑地に行ったり、洋館に忍び込んだりと楽しみ方はいろいろ。
なんなら細めの縦ルーバーを引き戸に仕立てれば、畳敷のお宿風もいいじゃないか。

一枚で部屋の空気を変える(かもしれない)ウッドシャッター。
悩ましいのは、ちょっとアレなこと‥

ご利用は計画的に、ね。