The Remains of the Summer:夏の名残り

多摩丘陵の朝夕は、夏と秋が同居を始めています。まだ残り少ない夏を惜しんでいる自分と、秋だアキだと必死に秋を探す僕がいるだけかもしれません。ですよね、朝起きて窓を開けても、まだモヤーッと暑いだけですもんね。

今年の夏は、いつもとは違う。それでも、たくさんの方とお会いしました。

見学する、というスタイルもいろいろで‥。マスクをして近県から電車を乗り継いでこられた方(この状況のなか本当に大変で、頭が下がりました)や、バイクに跨りタンデムで都心から来られた方。大汗をかきながら坂を上ってこられた方がいるかと思えば、涼しい顔をして信じられない距離をスマホ片手に歩いてこられた方も。お子さんの通学ルートも確認したいと、炎天下の見学後にまた歩き出したお母様。業者に頼らず事前に現地を歩いて確かめ、納得の上で改めて内覧に来られるという、見学者のお手本のような方ともお会いしました。もちろん、スイーッと業者さんのクルマで涼しく来られた方も多数居られます、これがある意味スタンダードですが‥。

ウチの(購入&リフォームの)やり方に興味を持っていただいた方や、団地でシンプルに暮らす相談をいただいた方々との嬉しい出会いもありました。(ウチもたまに掲載する)東京R不動産がお好きな方、猫と暮らしたい方、光と風を感じた方など、楽しいお話しもたくさんありました。ご実家に反対され、挽回のチャンスを伺っている方。お勧めされて来たけれど、ピンとこなかった方(もちろんこういうことが多いわけです‥)。セカンドハウスを、という羨ましい方。そして、緑の環境を求めている方も。

今年の夏が違うのは、都心部居住(のごく一部)の方の目が郊外に向いた、ということでしょうか。それは一番わかりやすい傾向でした。もちろん乗り越えるべき壁は相当高く、そう容易なことではないのでしょうが‥。

実際に住まいが(すぐに)決まった方は少ないのでしょう(当たり前ですが)。それでも、こんな時だからこそ、自宅での時間を豊かなものにすべく具体的な行動を起こした方々の意思を感じます。外の広さと比べると、自宅はとっても小さな空間です。ですが、自らの住まいにかけるエネルギーは決して無駄になることがないと思いたい。なぜなら、室内の設え方と気持ち次第では、その空間の広がりが無限大になるとも言えるのですから。

Bowwow! Meow meow~

(邦題:わんわん!にゃぁにゃあ)

にゃんという芸のない題名でアルか‥

男の子なら一度は憧れるロックバンド(そんなことない?)。僕がまだ男児だった頃、BOWWOW(バウワウ)という和製ロックバンドがありました(綴り、なんか違う?と念のために調べると後年VOWWOWに改名していた。どっちも正解)。途中から海外に出て行って、ワンワンをやめたのだろうか。

当時、日本男児が欧米カルチュアに憧れた時代。ビルボードやUKチャートに挑むJロッカーたち(即興造語デス)を誇らしく眺めていたっけ。ちなみにそんな僕は、小林克也さんから英語を教わりました。そんなハナシ、今は昔。

さて、マンションにおけるペット飼育のこと。

他人に危害を及ぼす恐れのある動植物の飼育研究はこれを禁止する。

これ、昔よく使った文言で、今もスラスラと書けました(正確かどうかは不明)。平成初期に発効した管理規約の条文です。飼育研究って、ナニ?

この規約では、基本的に「恐れ」は拭い切れないから飼育は禁止、という解釈。逆にこれに近い文言で、もし迷惑が発生したら、その時点で当該動物の飼育について禁止しよう、と解釈する分譲会社(と管理組合)もありましたが。この頃までは一般的なマンションにおいては、いわゆるペットの飼育を禁止する規約が多かったはず。水槽で飼育する魚類および小鳥以外の動物の飼育は禁止、です。

その後、体長や体高、犬種や描種の制限付きで理事長許可制とする規約が増えました。大型犬の多頭飼いが可能、を謳い文句にした、大型犬と暮らすハイライフ-スタイルを推す(大手業者の普通の)マンションまで突如登場したり‥。売出し当初に設定される管理規約の内容は、マンション業者(とその管理会社)の匙加減次第ということです。

僕の扱う住戸は昭和の終わりごろに建築されたモノも多いので、元々の規約で原則禁止としている場合が多いのです。緑が多い環境で、暮らしやすそうな部屋。となると猫や犬と一緒に暮らしたいわけで、ペット飼育可否を確認するお問い合わせが非常に多い。

昨今の飼育可能マンションよりも、却って飼育に適しているように思う物件も多いのですが、飼育禁止の規約を組合で変更するのは大変難しい。飼育を希望もしくは容認している組合員の存在が半数以上必要なのですから。もちろん、管理規約を変更して飼育可能とし、きちんと運営している管理組合の事例も知っていますが、その数はきっと少ないはず。

路地裏に猫のいる街はいい街だ、なんて言います。猫が窓から外を眺めているマンションは古くてもいいマンションだ、そんな評価基準が育って、誰もが猫飼育は大歓迎!になったりしたら面白いですね。たぶんないけど‥。

つくる‐たべる‐のむ‥

あーワイン飲みたい‥。この盛夏のお昼時、内覧していたお客様のつぶやき。

のどの渇きをワインで潤す。そういえばイタリアでは、水より安いワインが売られていることにびっくりした昔。更に聞くところでは、水が貴重な何処かでは、子供も水分としてワインを摂るとか。

ところで冒頭の弁は、単にのどが渇いている、という話ではなくて‥。

内覧の途中でダイニングに座って、マンション選びの雑談をしていた時のこと。ブラインドを上げて窓を開け放っていた室内を、何度となく風がサーッと抜けていく。「あーワイン飲みたい‥」。そうそう、たしかに。

風が抜けていく、窓外に緑を眺める。この心地良さ、他に何が必要だろうか!。そうだ、そうだ、それだけで充分だ!

いや、ちょっと待てよ、ワインとツマミが欲しいんだが!

リフォーム時に壁を抜き、間取りを整えたその住戸。その狙い通りに風が抜け、光が巡っています。ダイニングに座り、談笑しながら風を感じていると、設計時には想像だけだったこの住戸の心地良さが、実感として立ち上がってきて‥。確かに、この傍らにワインがあれば。さらに欲を言うならばツマミも‥。

上の写真は今回の住戸でなく以前の販売物件ですが、ここも気持ちの良い空間です。空と緑を見渡すオープンキッチンに立ち、目の前にあるダイニングに腰かけて、「あーツマミ作って、ワイン飲みたい」って言ってもらえたでしょうか。作って、食べて、飲む。また作って、食べて‥。何だか、飲んでばかりになってしまいましたが。

夕暮れ時のバル、白木が清々しい酒場‥、姿かたちを変えて(!)迫ってくる街の魅力(誘惑?)には抗し切れません。けれども、自宅を居心地の良い空間に設えることは、それらにも勝る心豊かな時間を与えてくれるはず。光が巡り、風が抜け、緑が映る‥そんな住戸をつくりたいですね。

リノベと言えなくて…夏

毎日たった1分ずつ、それでも日暮れ時刻の早まりをはっきり感じるこの頃。そして早朝、窓外の空気に僅かな秋の気配。そうは言いながら、日中の強烈な陽射しに打たれて、風情を感じる余裕はまだないけれど。

さて、僕がリノベーションという呼称を使わなくなって随分経つ。調べると8年前の販売物件を最後に、その後は単にリフォームと呼んでいる。その時を境にして改装内容が変わったわけではない。

そもそも僕のつくる住戸は、僕が思うところのリノベーションではないから、そう呼ばないだけ。そう呼んだ最初の数年は(若くないが)若気の至りだ。ちょっと恥ずかしい青春(若くは‥)の1ページみたいな。

ただ、ここではリノベーションの定義には触れない。定義も何も、巷間にはその言葉が溢れ、使われ、それが示すものとして理解されているのだから。それが今、世の中が定義する「リノベーション」なのだろう。

そして僕にとっては、もはやリノベーションでなくてもいいという気がするし、それを謳いたいわけでもないから。できるだけ無理なく簡単に、どんな気持ちの良い暮らしの土台ができるのか。つくって販売する住戸も、もしくは物件からリフォームまでご一緒するものも、そのどちらも目的は変わらないから。リノベのためのリノベ、凄いぜ!このリノベ、とはならないから。

昔、日本人ファッションデザイナーが世界の舞台に躍り出た時代。それに誰かがワーッと続き、国内に大きな市場ができて、DCブランド(はお洒落)と、ひと括りにする呼称ができた。峠を越えた、と感じる瞬間。ファッションはその時代を越え、また次の時代と幾つかの変遷を経た。そして、現在のスマートな着こなしがある(僕のことではない)。逆にファッション業界を取り巻く環境の激変も‥(もちろん激変しないカテゴリーもあるのだろうが)。

リノベの世界も同じような土俵の上にあるのか。今は盛り上がりのピークなのか。雑誌を見ても、独創的なはずのリノベ事例にも既視感がある気がする。

今のファッションの着こなしのように、住宅リノベ/リフォームも、肩ひじ張らずに無理なく気持ちよく。もっとそんな風になっていくのか‥、な。

ここまで書いて思うこと、ひとつ。上手に暮らす人は、どんな家でも何処ででも、素敵に暮らすことができるんだな、ということ。まるで身も蓋もないハナシ‥。なんで素敵なんだろ、どうしたらそうなるの?と思うけどそれを解るのは難しいこと。だから、そんな暮らしの舞台をつくるきっかけになるような、アシストとなるようなリフォームができればいいなと思う。

サバは北部に限る

例年、この時期になると秋刀魚が北海道沖を下っているはず。今年はどうか。近年の水揚げの少なさは、本当に単なる不漁なのか、それともこの旨さを知ってしまった誰かが、世界の何処かでゴッソリと‥。なんてあるわけないけれど。

しかし、そう疑うほどシンプルな焼き秋刀魚は旨い。築地には、特に旨いワタだけを食す関係者たちもいるとか、いないとか。もちろん僕は残さずいただきます。以前、炭火で焼きたいあまり、夕闇に乗じてテラスでモウモウと‥。ちなみに「管理規約および使用細則」中にサンマについての規定がないからといって、何でもやってよい訳がありません。

でもやっぱり、サンマは目黒に限る、のだ。

さて今回はサバ。先日市場から、丸一本のきれいな鯖を三枚に卸したものをいただきました。これ、〆鯖にしたら旨いよって。それ、おいらがやるんけ?

こんな時はネット検索、ではない。取出したる本は野崎洋光師匠。えーっと、砂糖で道をひらき‥。上の写真は、塩をして待つ、の図。

この鯖は川崎市の北部市場から。川崎市と横浜のたまプラーザの間にあるこの市場は、プロに混じって(邪魔にならない程度に)一般人が立ち入ることができるのです。

ここ市場で買い出しをして、自宅で料理、とするだけで、ちょっと趣味人になった気分。もちろん僕は趣味人ではないし、ホント気分だけだけど。でもそんな遊びができるのが、このエリアのいいところ。築地(豊洲か‥)ほど大げさでなく気軽な感じ。こはだを丸のままどっさり売っていたりと、ちょっと手に負えなそうなところも良い感じ。

だから、サバは北部に限る、のだ。

安心してください、フツーの店ちゃんとありますから!この辺では皆が市場で魚を買って自分で卸す暮らしをしているわけではありません(そんな感じもいいかも!)。お造りを盛ってくれる鮮魚店も、ふつーのスーパーも。マニアックごっこ(ごっこじゃない方が殆どです、スイマセン)が苦手の方にもいい魚が手に入る専門店ももちろんありますから!

グレート・バリア・フリー

「このマンションはバリアリーフなの?」

販売中の住戸内を黙って眺めていた、ちょっと素敵で、ちょっとすました奥様。案内に立ち会っていた僕の方を向いて、唐突に掛けてきた言葉がこれだった。

「え、‥?」 僕が固まった時間はおそらく3秒くらい。そしてその「?」が氷解すると同時に、脱力した‥。奥さん、オモロ過ぎ~(声には出ない)。

それ、バリアフリー‥。

バリアリーフと言えば、オーストラリアのグレート・バリア・リーフですが、沖縄エリアにも幾つかあるようです。※barrier reef = 堡礁(ほしょう)《海岸線に並行し、礁湖(lagoon)の海面を挟んで発達するサンゴ礁》(研究社・[かなり古い版]新英和大辞典)

ところで、バリアフリー(barrier free)。不動産業界では、建物の段差などがないという、狭義で用いられています。一方世の中では、社会的、心理的な意味まで含めて広く、暮らすための障害が除去された状態を意味することが多いようですね。物理的な段差だけが暮らしの障害ではない、ということ。

さてマンションの段差(バリア)について。というか、僕が扱うマンションの多くは、そもそも各住戸まで階段が必要。そんな構造(2戸1階段)を暮らしやすい間取りと言って推奨しているわけで。そんな僕がバリアフリーを語るのか!という感じです。

室内の段差は、どの程度まで許容できますか。段差の傾向は建築された時代、床の構造などでいくつかのタイプに分かれます。そして古いから段差がある、段差が大きいという訳でもない。唯一無二の住戸との出会いの中で、何に重きを置くのかという話ですね。なお、段差のメカニズムについて文章だけではややこしく、長くなるのでここでは割愛します。

逆に、やっと見つけたこの物件!あとは段差ね‥。そんな向きには、床からのリフォームで段差解消が可能なこともあります。その場合は床を上げて、壁や建具も全部やり直して、天井や梁下が低くなって(それとも天井壊して高くして)‥と、そこにお金を掛ける価値を感じるかどうか。

上の写真もバリアフリーではなく、浴室の床が上がっています。ここ以外はほぼフラットでした。というか、浴室が上がっているという認識さえ無く‥、慣れって言うか‥。

必要な方には必要な対処を、そうでない方にはそれなりに。将来も(ある程度)見据えながら、自分らしい暮らしと住まいは何かについて、自分なりに考えていきたいですね。

olive,olive,olive!

EST!EST!!EST!!!はイタリアの白ワイン。ある司教がローマへ向かう道中、使いの者が先回りしてうまいワインを探し、軒先にEST!(ここだ!)と目印をするお役目を仰せつかった。特にこれは美味だったため、是非に味わうべしとEST!!!3回で強調したのだ。このワインをいたく気に入った司教は、ローマでの任務が終わるとに直ちに舞い戻り、このワインを幾年かたっぷり楽しみ、最期はこの地に眠ったというお話。うーん、素敵。(実際、墓もあるのだとか)

そういえば、徳川家康はポルトガル伝来のテンプラをたいそう気に入り、食べ過ぎて亡くなった。と子供の頃に本で読んだのですが、そんな話ホンマにあるんかいな。(これ定説?調べたことありません‥)

さて本題はOlive!Olive!Olive!。上はイタリアの町と友好都市を結んでいるという街角で撮った一枚。

ひとつ目のOlive! 約20年前、僕もテラスのプランターにオリーブの木を植えました。細かった幹は太くなり、その後には新入りも増え、新旧仲良く並んでいます。

樹木は一朝一夕には大きくならないけれど、月日の経過を改めて感じさせてくれる。新しく居を構えたら記念に植えてみてはいかがでしょう。景色としても、枝を広げたオリーブは良いものです。

月日の経過と書きましたが、オリーブにとって20~30年なんてまだコドモ。樹齢200や300年は普通なんですって、世紀をまたぐ古木もあると言うのだから‥。我々の忙しい時間軸(忙しいという字は、心をなくすと書きますね)とは全く異なるスケールで生きる樹木を傍らにどうぞ。

ふたつ目のOlive!は食べる、飲む(?)。日々のオイルとしてはもちろん、実を刻む、煮込むなど、少しあるだけで料理が深く、楽しく、美味しく。

Olive三つ目!は使う。愛用しているオリーブの木ベラ(ターナー)。鍋への当たりが柔らかいのに、堅くて丈夫。あのオークより堅いんだとか。オリーブの採取を終えた古木から作られるそうです。経年変化を楽しんでいます。

おまけでもう一つのOlive!オリーブ石鹸!若いころ髪までこれで洗い続けたら、しっとりを通り越してペッタリして‥。アレッポ石鹸はシリア産。拠点を移すと聞いた気がします、どうか‥

ここでは一つ目の、植樹のススメ、を書きたかったのですが、当初から脱線で思いのほか長くなりました。乱文御免!

経年変化、経年無変化

街角でのスナップ。はて、こういう写真もスナップと呼んでいいのでしょうか。

それはさておき、戸建住宅に設置された目隠しの柵です。コンクリート基壇部分とルーバーが新築時のモノなのでしょう。そして後に、継ぎ足すように上部の柵を(おそらく)DIYで取り付けたと思われます。

これ、どうでしょう?この対比。

新品同様に若々しい下段ルーバー、そして早くも時の経過を感じさせる上部木製柵。

永遠の青年と言いますか若づくりの下段ルーバー、いつもキレイ。木粉と樹脂を混ぜた製品が昨今多いですが、その類いでしょうか。ナイスな表情を崩すことがなく、お手入れも簡単そう。経年変化ならぬ経年無変化、とでも言いましょうか。

一方の後付けの木製柵、いい味出てます。お若いのに随分と年季を感じさせる表情ね。しばらくはそのままでもいけそうですが。

僕は木製柵にシンパシーを感じますが、これは好き好きですね。どちらが良いかと議論するようなことでもないし。ただ、その対比があまりにも対照的だったので思わず題材に挙げてしまいました。

木製柵は、適当なところでキシラデコール(商品名です)のような木材保護塗料を塗ってみてはいかがでしょう。ベタッと塗るペンキと違い、木部に浸透する塗料なのでナチュラルです。晴れた日に塗る、それだけ。

それにしても、未来永劫変わらないモノはない。いつも新品のように振舞っていた樹脂製ルーバーも、突然ガクッと‥。経年無変化急激変化。その時は即交換ということですか。

晴れた日に塗料を塗って経年変化を楽しむも、いつもキレイな樹脂製建材を使い切るも、どちらにしても大切に扱いたいものです。

草、はえる

※正面の白い建物は本文中のマンションと関係がありません。近そうに見えますが、約20mの離隔があります。

こちらの面積は約65㎡(約40帖)です。

そうなんですかー、ちょっと小さめ3LDKですねー。

いいえ。専用庭の面積が65㎡です。

マンション室内からの景色と言えば、バルコニー越しに見える借景。でも、庭のある1階や広いテラスのある住戸の景色はそれだけではない。つまり、庭やテラスがあれば自分だけの景色をつくることができるということです。ましてや65㎡もあると‥。

雑草が、はえる。

この庭にはメキシコ原産のアガベ(リュウゼツラン、テキーラの原料です)が葉を大きく広げています。うまく手を入れていけば、この庭に居ながら異国へトリップできそう、という迫力。以前は、中央に伸びるブルーベリーと並んでパンパスグラス(これもアメリカ産、イメージは巨大なススキ)がアガベ以上の威容を誇っていたのですが、これ綿毛がスゴーイのヨ。お隣さんがつらそうなので、僕が住戸のリフォームをする段階で撤去しました。ちょっとだけ残念だけど。

前オーナーは野趣あふれワイルド過ぎる庭がお好きだった様子(僕、アガベは飲む方も好き)。それを、未だ見ぬ次のオーナー(リフォーム済で販売する住戸ですから)のために端部を整え、埋まっていた煉瓦タイルを掘り起こして花壇風に並べました。すみっこには竜のひげ(あのトトロのお土産の‥)も植えて。

果して購入されたのは、やはり草木や土がお好きな方。もっとずっと遠くの山まで家探しに行かれていたようですが、街(の近く)に戻ってこられました。今では、きっとこの庭の様子も大きく変わっていることでしょう。この住戸は室内にも沢山の天然木を使用しており、ある意味、山小屋風でした。それも何かのご縁でしょうか。

それにしても、広い庭は(モチロン広くなくても)雑草がモリモリ。特に夏は容赦ありません。専用庭のある物件を複数抱えていた時(モノ好き‥)には、アーそろそろ(草抜きに)行かないと!と夢に出そうで、でも腰が上がらないという。

という訳で、気合を入れて(!)向き合いたい広い専用庭。手を掛ければ特別な空間になりそうですね。条件の合うマンションは少ないですが、見つけたら少しだけ想像してみてください。

もしも、つくるならさぁ‥

もしも、自分ひとりだけの小さな居場所をつくるとしたら‥。

条件は、手に届く範囲の現実的なもの、そして集合住宅で。としよう。

まずは建物。ピカピカなのは気疲れしそうだから、少し古めのものがいい。外壁が白い塗装で、階数は3~4階建て。帰宅時に自分の居場所を見上げて寂しくならないように、しっかりと造られ、ていねいに管理されていることがわかるものを丹念に探す。入口にはそれと判るキレイに刈り込まれた植え込み、もしくは大きな木が一本あるといいけれど。

面積は45~50㎡程度が希望だが、これが意外と難しい。昭和50年代半ば以降のそれなりのマンションでは、この面積帯がメイン住戸になることは少ないから。小振りな住戸があるとすれば、①メイン住戸と同じ南向きだがEVを抱き抱えた(ために北側の一部が欠けて小さくなった)タイプ、もしくは、②(南向きだけでは容積を消化できなかったためにできた)東西向き住棟にあるタイプ、のどちらかとなる(もちろん例外を見つけるのは楽しい)。僕は後者②の角部屋をできれば選びたい。南は向いていないけれど住戸のカタチは細長でない場合も多いし、たくさんの窓は使い方次第で豊かな空間がつくれそうだ。ただし、面積が50㎡を超えてしまうことが多いけれど。

プランは、既存の間取りを見てから決める。ただし、生活に必要なものを見極めて、最小限で成り立つ居場所がいい。水と火が使えて、道具と食器が少しだけある。そんなイメージで。

内装は、建物の佇まいと違和感なく馴染むようなものを。僕の選ぶ建物からして、簡素な素材、素の材料が似合うと思う。のではあるが、せっかくの秘密基地はアームチェアトラベルで何処へでも何時へでも飛べる‥みたいな空間を設計者と考えたい。もちろんお金は掛けず、アイディア勝負のね!

‥‥

そんな自分だけの部屋なんて、現実味ないなぁと自分でも思う。そんなの夢想だな、と書きながらも考えていたところで思い出した。だいぶ前だが女性のご購入者が、ご自身専用の隠れ家だと仰っていたっけ。お嬢さんには合鍵を渡すけど、と(では、鍵をもらえないのは‥?)。一生懸命はたらいてきたんだし、この部屋はご褒美なのよ‥。確かにその部屋はキュッと小振りで、心が軽やかになりそうな設えだった。そして、家なのだから安いという表現は適切でないけれど、比較的手頃な価格でもあったのだ。

そう思うと、そんな非日常のような日常も比較的身近になってくるのかもしれない、と思ったりする。