もしも、つくるならさぁ‥

もしも、自分ひとりだけの小さな居場所をつくるとしたら‥。

条件は、手に届く範囲の現実的なもの、そして集合住宅で。としよう。

まずは建物。ピカピカなのは気疲れしそうだから、少し古めのものがいい。外壁が白い塗装で、階数は3~4階建て。帰宅時に自分の居場所を見上げて寂しくならないように、しっかりと造られ、ていねいに管理されていることがわかるものを丹念に探す。入口にはそれと判るキレイに刈り込まれた植え込み、もしくは大きな木が一本あるといいけれど。

面積は45~50㎡程度が希望だが、これが意外と難しい。昭和50年代半ば以降のそれなりのマンションでは、この面積帯がメイン住戸になることは少ないから。小振りな住戸があるとすれば、①メイン住戸と同じ南向きだがEVを抱き抱えた(ために北側の一部が欠けて小さくなった)タイプ、もしくは、②(南向きだけでは容積を消化できなかったためにできた)東西向き住棟にあるタイプ、のどちらかとなる(もちろん例外を見つけるのは楽しい)。僕は後者②の角部屋をできれば選びたい。南は向いていないけれど住戸のカタチは細長でない場合も多いし、たくさんの窓は使い方次第で豊かな空間がつくれそうだ。ただし、面積が50㎡を超えてしまうことが多いけれど。

プランは、既存の間取りを見てから決める。ただし、生活に必要なものを見極めて、最小限で成り立つ居場所がいい。水と火が使えて、道具と食器が少しだけある。そんなイメージで。

内装は、建物の佇まいと違和感なく馴染むようなものを。僕の選ぶ建物からして、簡素な素材、素の材料が似合うと思う。のではあるが、せっかくの秘密基地はアームチェアトラベルで何処へでも何時へでも飛べる‥みたいな空間を設計者と考えたい。もちろんお金は掛けず、アイディア勝負のね!

‥‥

そんな自分だけの部屋なんて、現実味ないなぁと自分でも思う。そんなの夢想だな、と書きながらも考えていたところで思い出した。だいぶ前だが女性のご購入者が、ご自身専用の隠れ家だと仰っていたっけ。お嬢さんには合鍵を渡すけど、と(では、鍵をもらえないのは‥?)。一生懸命はたらいてきたんだし、この部屋はご褒美なのよ‥。確かにその部屋はキュッと小振りで、心が軽やかになりそうな設えだった。そして、家なのだから安いという表現は適切でないけれど、比較的手頃な価格でもあったのだ。

そう思うと、そんな非日常のような日常も比較的身近になってくるのかもしれない、と思ったりする。

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