これでもいいのだ

奥に見ゆるは、ERCOL社のアンティークチェア

上写真はリフォーム後に販売した住戸、ウチでは数少ない平成以降の建物です。これも例に漏れず、ボクの好みである両面バルコニーと玄関ポーチタイプ(ご参考:「2戸1階段(ニコイチ・カイダン)」)ですので、寝室の前が開放廊下になっていて窓を開放できない!という悩みもありません。北側の窓外にも緑を眺める、落ち着いた暮らしができる住戸です。

最上階だったのでリビングには勾配天井が。この(元)リビングを新ダイニングと定めて大きなテーブルを置きました(新リビング=写真左側に写る(元)和室+窓のある(元)廊下、へと間取り変更しています)。

ちなみに、食事の際に一人当たり必要なテーブルは幅60cm×奥行40cmと言われます。つまり4人掛けはミニマムだと120×80cmですが、上のテーブル幅は220cm。大家族用ではない専有面積73㎡の住戸ですから、ちょっとテーブルが大きいですね。たまには大人数で食卓を囲むことも有るでしょうが、そのために大空間を用意した訳ではありません。

食事のためだけに存在するテーブルではなく、誰かが何かをできる場所に。自由な空間が住まいの真ん中にある暮らし方はどうだろう、と大きめのテーブルを設置したのでした。(実はこれ、二段階伸張式テーブルで140、180,220cmと伸縮自在です。こんな大きいテーブル要らない!と言われた場合に備えてのこと‥)

微妙な広さのリビングダイニングに、無理してテーブルセットとソファを置くよりも、却って大テーブルのみの方が、カッコ良く実用性にも富む場合もあるのではないでしょうか。つまり「ソファを置かないと‥」を一旦外してみるのもアリなのでは‥。(なお、この住戸は先述の通り、解体した廊下と和室を合体するという荒業によりリビングもつくりましたが‥)

例えば北欧サイズのモノがいっぱいのIKEAには、こんなテーブル(下写真)があります。235×100cmと日本ではあまり見掛けない堂々としたもので、奥行100cmもテーブル向かいのヒトが小さく見えるほど‥(‥なワケないか)。WEBサイトの説明に「ファームハウス(農家)のような」とあるように、武骨でどっしりした雰囲気がラフな暮らし方に似合いそうです。小割りで間数の多い住戸では何だかパンパンな感じですが、リフォームで部屋を拡げたならば、こんな大テーブルの方が却って部屋を広く感じさせるかも知れません。その上で、部屋の隅に一人掛けソファ(アームチェア+オットマン)なんぞを置けたら良いではないですか。

ちなみにこのテーブルは、天板の表面に厚さ3mmのオーク挽板を使用しています。0.2~3mmの一般的な突板と比べると充分に厚く(この世界ではこれを厚い、という)、無垢材と見紛う存在感です。この大きさの割には比較的買いやすい価格も相まって、以前書いた「家はこれでいいじゃないか」ならぬ、「テーブルは、これでいいのだ」という感じですね。

IKEA公式サイトより


ボクが大家で、店子もワタシ

ウチの店子、Kumataro Lancia、Kumajiro Lancia 兄弟

店子と書いて、タナコと読みます。借家人を指す古い(江戸?)言葉ですが、当時とは大家との関係も異なりますし、現代ではあまり目にしません。業界では、店舗のテナント(だけ)にその呼称を用いる場合が多いですね。語呂が良かったので、そんな言葉(タナコ)を使いました。スミマセン。

さて‥

日経ビジネス誌で宗健さんという先生が、「持ち家VS賃貸論争はデータを見れば結論は出ている」という記事を書いておられました。その中の小見出しのひとつが、

「持ち家は、自分を顧客とした最も確実性の高い賃貸事業」

というものでした。これは僕が以前に書いた「マンションの鍵貸します」に出てくる、「自分が大家で自分が店子」という内容と全く同じことですね。せんせー、ボクもそう思います。

ちなみに先生は、賃貸住宅に含まれているコストについて次の(箇条書きの)ように挙げて、「その家主が得る利益が自分のものになる分だけ、持ち家は賃貸より有利になる。」と簡潔に述べられていました。(あくまでも一般例です。逆に、例えば自分は借家に暮らし、別に所有する賃貸住宅から収入を得る資力や運用力があれば、ハナシは少し違ってくるかもしれませんね。)

  • 家賃には、家主の利益が含まれている(持ち家は自分のものだから利益は乗せない)
  • 家賃には、家賃滞納コストが含まれている(持ち家は自分で払うので他人の滞納リスクは負担しない)
  • 家賃には、空室コストが含まれている(持ち家は自分で住むので空室コストはない)
  • 家賃には、入居者が入れ替わるときに家主が負担する原状回復コストや入居者募集コストが含まれている(持ち家にはそうしたコストは発生しない。ただしリフォームコストは発生する場合がある)
  • 賃貸物件のためのローン金利は持ち家のローン金利よりも高く、その差額分は家賃に乗せられている。

もちろん、上記は経済的側面の話です。持ち家は住宅ローンを完済後すれば居住費がドンと下がる一方、頻繁な転居には不自由。一方、賃貸は借入金を抱えず心は軽く暮らせるものの、将来に亘り家賃を支払い続ける不安がある‥などなど、どちらも良いことだけではありません。そして何より住まいとは、経済的な損得だけでなくライフスタイルに絡むことですから、決まった結論はありませんよね。でも、経済的には結論が出ている、という記事です。

先生の話に加えて、持ち家を購入するのなら、もうひとつ考えておきたいこと。それは、時間軸。以前、「家は焦らず ‐You Can’t Hurry Home-」の中で、家を購入する行動に移るまでの長い(準備・検討)期間のことを書きました。そんな期間中も時は過ぎていく。だから、その時間さえも自分の側に取り込んで、味方につけた方が良いのではないか、という内容でした。

以上の2点は既に、誰かが何処かで謳っていた内容だろうと思います(自分の中に湧いてきたことを書いた気でいる僕も、それを覚えていただけなのでしょう‥)。よく考えればわかる基本的なことですが、ここに改めて思い起こしてみました。

でも、もっと忘れてはいけないコトがあります。それは、住まいや暮らしはそもそも損得ではないこと。そして、あまり無理をしない、ということですよね。