4月を迎えた君へ

4月になった。

ウチには、春に恒例の異動も入社式もない。
だって個人事務所だから。
その意味においては季節感のない日々を暮らして15年が経つ。
でも、昇進とか昇給とかワクワクするにゃぁ~、いいにゃぁ~

そんな折、古巣の後輩の抜擢人事を紙面で知った。
トップは見ていたということか。
捨てたものではないな、と思った(ナニが‥?)。

勝手にお祝いすることにした。
新人だったその後輩を、当時から可愛がっていた先輩を誘って。
もちろん本人には声掛けしない。
だって困るだろう、こんなときに。
果たして、二人で会うや話し込み、祝杯どころか彼の名さえ挙がらずにお開きとなったとさ。
まあそんなもんだ、我々にも語りたいコレマデとコレカラが、たくさんあるのだよ。

もちろんお祝いの言葉を伝えた、「我が事のように嬉しいよ」と。
すると「嬉しさもありますが、緊張感が大きく上回っている感じです」と返信がある。
そこで「我が事のように嬉しいが、我が事となれば嬉しくないナ」と返す、本当にそう思う。

トップから「胆力を評価する」と言われたという。
口舌ではなく、胆力でしなければならない仕事がある。
そりゃ大変だよナ、重圧だ。
でも誰かがやらねばならぬのだナ。

ボクが会社を去って15年、その15年間もずっと彼は闘ってきた。
ボクは、An Officer and a Gentlemen(愛と青春の‥)の教官が士官候補生に対したように、彼に最敬礼をした(‥気分になったよ)。

ところで、毎年この時期に目にしていた新聞広告がある。
そう、新社会人になる君へ。
伊集院静さんからのエールだ。
毎年、毎年、新年度がスタートする日(そして成人の日)の紙面に掲載されてきた。
水や空気のように、当たり前の風景になっていたその広告。
毎回、広告から言葉を見つけ、心新たにスタートラインを引き直した、少しだけ。
もうボクは新人ではなかったけれど。

そして今回‥

毎回エールを送ってきたご本人が、もう今年は居ない。
「2000年4月に初めて伊集院静さんが執筆された第1回原稿を改めて掲載し‥最終回とすることに致しました」とあった。

「道が二つあるならば、厳しい方を行け」
つまり、EVが有っても無くても階段を行け。
「向かい風に向かって行け」
つまり、段差や坂道のある物件を手掛けろ。

『はい、心して取り組んで居ります』
んー、ちょっと違うか‥