内装は気に入りました!

「内装は気に入っていらっしゃいますが、駅が遠いことに難色を示されています。」

「内装は気に入っていらっしゃいますが、坂道がネックです。」

「内装は気に入っていらっしゃいますが、近隣にスーパーがないので見送るとのことです。」

これら「内装は気に入って‥」という枕詞、この10年間ずーっと聞き続けてきました。ウチの物件を案内いただいた不動産会社担当者からは、そんな感じの状況報告が多いのです。今にも買うゾ!という勢いだったのに‥、というのはもはや慣れっこで。

でも、それなりに嬉しくもあります。ご検討者は、担当者に連れられて数多くの物件を内覧しますが、(いずれ)購入する(だろう)物件を除いて全てが見送り物件です。そんな見送り物件群の中でもウチの物件は記憶に残り、(間取り・内装だけは)気に入っていただいただけたわけですから(ご担当者の単なる断り口上の場合もありますが‥)。なお、数多くの物件を一気に巡って検討するというスタイルがどうなのか、というのはここでは置いておきましょう(以前の記事で書いています)。

今でこそ、売主として直接SUUMOなどに掲載もしますが、基本的にウチは黒子役。当社物件のほとんどは不動産会社から顧客へと紹介されます。それでも内覧時にはできる限り立ち会い、お話しを伺い補足説明をしたり、内覧の様子を観察したりしています。日々、生の声を聞くことで、そこから得るものも多いのです。(「売主立会いだと助かる」、逆に「売主立会いは面倒だ」と担当者によって反応は様々ですが‥)

それにしても、そうは言っても‥。駅が遠いとか、スーパーが近くにないということは初めから分かっているのことですから、もう少し何とかならないかと思ったりします。

つまり「住戸が良ければ、坂道や不便を乗り越える心積もりがおありか‥」と。そんな固い言い方でなくても、「現地までスンゴイ坂道です。汗だくですよ、ホントウに大丈夫ですか」とか「最寄りのコンビニと言っても駅前スーパーの並びです、もはやコンビニ‥とは名ばかりです(笑)」とか、検討者の覚悟を問うたうえで(笑)ご案内いただけると、尚良しです。(※すでに覚悟を持った方々をお連れいただいているのに、物件がそのお眼鏡にかなわないだけ、かもしれませんが‥。)

なんて言っていたら、誰も見に来てくれないよナー。

もっとも、貴社の物件は面白いから、と(ちょっと無理して)ご案内コースに組み入れていただくこともしばしば。お客様が意外な反応をすると、ご担当者共々嬉しいものです。実際、縁もゆかりもないエリアにあるウチの物件を、ご担当の導きで見学して購入に至ったという方が何組もいらっしゃいます。

写真の住戸もそんな経緯での購入でした。その方は、いろいろと見学するもピンとくるものが無く、担当者も「今日で最後です、ダメなら諦めましょう」と臨んだ最終案内日。その最後の物件がコレだったという良くできたハナシ。そのご担当の同僚がウチの物件をご贔屓にしていただいているご縁でご案内、そしてご購入と至りました。この住戸も例に漏れず、ちょっと不便だけど、ちょっと楽しい物件。えっ、写真見てもピンと来ないですか‥。そうですねぇ、こればかりは人それぞれだからこそ、楽しいわけですからねぇ。

小さな手掛かり

新聞のコラムで目にした、知らないドラマのエピソード。

傷ついて会社を辞めてしまった女性が、勇気を奮って新しい会社に入社した。近所に住む知人が彼女に新しい会社を選んだ理由を問うと、「会社の受付に生花が活けられていたから」そして「そんな人がいる会社なら、いいこともあるだろうと思って‥」と答えた。彼女は高校時代は華道部に属していたのだ。曰く、自分が一番輝いていた時期だった、と‥。

ほんの小さな手掛かりが、道を拓く勇気をくれたり、自分を引き上げてくれることがあります。侮ることなかれ、上のエピソードのような小さな出来事が、案外自分にピッタリの選択を連れてくるのかもしれません。

人は(少なくともボクは‥)とかく、(自分の想いとは裏腹に)客観的な条件に左右されることも多い。他人からの評価だったり、表面上の割引率だったり‥。他人ならどんな選択をするか、というモノサシで測るとわかりやすい気もするし。

でも、あとで心の声を聞いてみれば‥。そうじゃないだろー、ということもよくあることで。

マンション選びも同じかもしれませんね。衣や食に関しては、日々の暮らしの中で自分らしい選択肢を持っていても、住居、ましてや購入、さらにリフォームとなると、自分の皮膚感覚ではないもっと大きな「何か」の存在に導かれて(?)住宅購入ノウハウ本やハウツーサイトを必死に目で追ってしまう。そして徐々に違う方向に‥。もちろんそれはある意味正しいのだけれど、真っ当な生活者としての感覚がちょっと鈍る、というのでしょうか‥。

誰のため、何のための住まいなのか‥もう一度思い起こしたい。そして、小さな手掛かりを起点に想像を膨らませてみる、一つの「好き」を手に持って見定めてみる。それも良いのではないでしょうか。却ってその方が、自分の心に忠実なものに近づくのかもしれません。

例えば、道すがらにパッと開ける森の眺めや、夕暮れ時に明かりが灯る建物の佇まいにホッとする‥。はたまた、南窓に面したキッチンが気持ちよさそう、とか‥。

上の写真は、ある住戸の専用庭に咲いた梅の花です(季節外れでスミマセン)。前所有者(素敵なご高齢の女性です)が丹精されていました(この梅は誰のものか、ということは置いておいて‥)。

後にこの住戸をご購入される方が内覧の際に、「あ、この木は‥」とおっしゃったのが印象に残っています。もちろん梅の木が「売り」の住戸ではなく、ちょっと楽しい間取変更を施したリフォーム済住戸でしたから、梅が小さな手掛かりとなったか否か、今となっては知る由もありませんが‥。

魅せられて

おおっ、これいいじゃない!と目を引いた冷蔵庫たち。街の家電販売店でのスナップです。どうですか、表に出してサマになるレトロな感じ。これがあるだけで、どんなキッチンを作ろうかとイメージが湧いてきますね。是非、オープンキッチンに置いてみたい。

世の中では、ピカピカのステンレス製や家具キャビネット内隠蔽タイプなど、冷蔵庫としての存在感を消そうとするものが多い中で、上の製品はもっと表に出たいと無言で語ります。

ちなみに容量は300リットル弱でしょうか、威圧感のない小ぶりな感じ。一般的に冷蔵庫の容量は、70L X 家族数+100Lとも言われますが、簡略な計算式に頼らず自分で考えてみても‥。そう、暮らし方次第ですよね。逆にこの冷蔵庫ありきで生活スタイルを再考してみたくなるくらい。もし足りないなら、別途(裏に)冷凍庫を備えたりするのも、それっぽいかもしれません。

ちなみに真ん中がイタリアSMEG社製(660,000円)、右側はスロベニアgorenje社製(371,800円)。目ん玉飛び出拾万円。ちなみに左側のステンレス製は知りません‥。なお、 アメリカにも外見がレトロで中身は最新式のBigChill社製なんてのがあるようです(価格はやはり同程度です‥)。それにしても、やはり高いなー(ボクには‥ですヨ)。

ということで他も見てみると、「似ている」製品群があるじゃないですか。100~200Lと少し小振りではあるけれど、価格は1/10程度。それらの特徴は丸味を帯びたフォルム、メッキ風把手、レトロなロゴデザイン。ボクにとってはこれらが揃うことで似たモノに見えただけで、本当は(価格差に見合う)何かがあるのでしょうけれど‥。

以前に玄人筋(どんなスジ?)に評判の良かった無印良品の冷蔵庫(当時は確か東芝/日本製)は、惜しまれながら一旦消えていましたが、今は復活しているようですね(中身や詳細は知りません‥)。そっち(どっち?)のセンで言えばMUJIデザインは素敵ですが、今回改めてこのレトロデザインを見て、ウチの手掛けるちょっと古くて居心地の良い住まいに似合うなぁと思ったのでした。

余談ですが、購入からリフォームまで現在進行形でご一緒しているSさん。キッチンイメージはアメリカンダイナー、もちろん床はチェッカー柄よ!(いつ冷静(?)になってもいいようにフローリングの上にネ‥)という方です。そんなSさんには、上の冷蔵庫たちが似合うなぁと一瞬思ったのですが、よく考えたら彼女の手に掛かれば普通の白物家電だってカッティングシートでアメリカン!だなと合点した次第。

万事そんな感じで楽しそう、こちらまで一緒に愉快な気分です。Sさん、自家製ロースト珈琲豆をたくさんに有難うございます。もう残り僅かなんですけど‥