小さな手掛かり

新聞のコラムで目にした、知らないドラマのエピソード。

傷ついて会社を辞めてしまった女性が、勇気を奮って新しい会社に入社した。近所に住む知人が彼女に新しい会社を選んだ理由を問うと、「会社の受付に生花が活けられていたから」そして「そんな人がいる会社なら、いいこともあるだろうと思って‥」と答えた。彼女は高校時代は華道部に属していたのだ。曰く、自分が一番輝いていた時期だった、と‥。

ほんの小さな手掛かりが、道を拓く勇気をくれたり、自分を引き上げてくれることがあります。侮ることなかれ、上のエピソードのような小さな出来事が、案外自分にピッタリの選択を連れてくるのかもしれません。

人は(少なくともボクは‥)とかく、(自分の想いとは裏腹に)客観的な条件に左右されることも多い。他人からの評価だったり、表面上の割引率だったり‥。他人ならどんな選択をするか、というモノサシで測るとわかりやすい気もするし。

でも、あとで心の声を聞いてみれば‥。そうじゃないだろー、ということもよくあることで。

マンション選びも同じかもしれませんね。衣や食に関しては、日々の暮らしの中で自分らしい選択肢を持っていても、住居、ましてや購入、さらにリフォームとなると、自分の皮膚感覚ではないもっと大きな「何か」の存在に導かれて(?)住宅購入ノウハウ本やハウツーサイトを必死に目で追ってしまう。そして徐々に違う方向に‥。もちろんそれはある意味正しいのだけれど、真っ当な生活者としての感覚がちょっと鈍る、というのでしょうか‥。

誰のため、何のための住まいなのか‥もう一度思い起こしたい。そして、小さな手掛かりを起点に想像を膨らませてみる、一つの「好き」を手に持って見定めてみる。それも良いのではないでしょうか。却ってその方が、自分の心に忠実なものに近づくのかもしれません。

例えば、道すがらにパッと開ける森の眺めや、夕暮れ時に明かりが灯る建物の佇まいにホッとする‥。はたまた、南窓に面したキッチンが気持ちよさそう、とか‥。

上の写真は、ある住戸の専用庭に咲いた梅の花です(季節外れでスミマセン)。前所有者(素敵なご高齢の女性です)が丹精されていました(この梅は誰のものか、ということは置いておいて‥)。

後にこの住戸をご購入される方が内覧の際に、「あ、この木は‥」とおっしゃったのが印象に残っています。もちろん梅の木が「売り」の住戸ではなく、ちょっと楽しい間取変更を施したリフォーム済住戸でしたから、梅が小さな手掛かりとなったか否か、今となっては知る由もありませんが‥。

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