夢の跡にて

「ぼんやりとした写真を見ろ!」「春霞だ!」「重機の土埃だ!」「いや、写真が下手くそだ!」

さて、この現地はよく知る場所なのですが、久しぶりに通り掛かったところ、これまで存在していた数棟の低層集合住宅が跡形も無くなっていました。

消えた住宅群は、ある特殊法人が所有していた職員用宿舎。時代の流れで閉鎖されていたのです。何人も立ち入らぬよう周囲はぐるり閉じられ、バリケード越しに覗くススキがなんとも「兵(つわもの)どもが夢の跡」。そしてそのまま月日が経ち、民間に売却されて現在に至ります。

2,000坪超の広大な敷地に5台の重機が入って造成中。新築分譲戸建て約50戸が計画されています。敷地は東西に長く、南に傾斜するひな壇状である上に、南北西の三方で公道に接していますから、(無駄なく)ピッチピチ(‥)に戸建を配置することができる。(ある意味では‥)戸建用地として好適と言えましょう。

ちなみに、写真奥の方、つまり造成中土地の向こう側にRC建造物(のアタマ)が見えますね。これは3階建の分譲マンションで、以前にボクもリフォーム販売を手掛けています。窓外には敷地内の樹々が茂り、鳥のさえずりで目が覚めるという羨ましい環境にある住戸でした。

低層地域といえばイメージは戸建住宅。たとえ大きな土地があっても、容積率が低く建物を上に伸ばすことができない地域のマンション事業は(一般的に)厳しく、戸建事業者に(土地を)買い負けてしまう場合が多いのです(もちろん条件次第ではマンション用地になり得ます。また、丘陵エリア特有の傾斜地などではコンクリートのカタマリであるマンションの方が出番が多かったりもしますから、低層地域全てが戸建になるわけではないのですが。なお、賃貸マンションに3階建が多いのは別の話です、土地が代々の所有ですから‥)。

ということで、上の低層マンションは(昭和のものとはいえ)比較的珍しい部類と言えましょう。

随分前にはこんなことを言われていました。マンションは戸建を買うまでの(マイホームすごろくの)通過点であり、上がりは一軒家だと。郊外まで出ていってマンション買うの?とか‥。今はあまり聞きませんけどね。

しかし、空が広く緑の濃い環境を好む方の全てが戸建派とは限りません。(一般的な戸建に比べれば)管理や処分が比較的容易であり、費用を抑えて身軽にいることができるのが中古マンションの良いところ。その視点に立つ方ならば、戸建エリアに立地する低層マンションは望ましい選択肢になり得るでしょう。

‥と書くも残念ながら、前述の通り低層3階建マンションは数が少ない。でも少ないながらも、時代の追い風を受けた(敷地配置、住戸プランともに)贅沢なマンションも時々見られます(上写真はちょっと違うが‥)。今となっては新たにそれらを造ることができないでしょうし、(少なくとも)近い将来に登場する機会もないように思います。

そう考えると、ますます貴重に思えます。ましてや、当時の工事に掛かったであろう金額を想うと、現在の販売価格は「エッ!」と思うほど安かったりする。

もちろん、それが世の中の一般的な需給バランスからくる評価なのでしょう。でも自分自身にとってそれが良い物件ならそれでよし。つまり世間一般とジブンの価値観が違うなら割安に思えるわけですから、益々良いではないですか! 

「この書き散らかした投稿を見ろ!」「何が言いたいんだ!」「いったい誰に向けて書いているのだ!」「いや、これはただの雑記だ、独り言だ!」

市中山居

寒暖と晴雨を繰り返しながら、ようやく四月になりました。

冬のあいだの多摩丘陵は、葉を落とした樹々や森でさえもボリュームがあるせいか、人工物で埋められた街よりも少しだけ寒々しい。だからこそ、春を迎える喜びは都心の街と比べて大きいのかもしれません(もちろん、厳しい冬を越えて春を迎える北国とは比べ物にならないけれど‥)。

森に近く暮らすことの楽しみ(楽しい”面”というのが正しいですね‥)をしみじみと感じる、今日この頃です。

昨年中にリフォームをご一緒した方からのメールに、「すっかり朝型人間になりました。朝が気持ちよい場所です、シジュウカラが鳴いています」とありました。これまでは都内の閑静な住宅地にお住まいだった方です。窓の外に小さな森が見え、その向こう側から朝日が昇り、鳥がさえずる環境はまさに別世界でしょう(笑)。

そういえば一昨年も、同様に都内の閑静な住宅地から丘陵に移られた方が居られます。街の喧噪を少しだけ離れて、別荘(暮らしのような)生活をすべくこの丘陵に分け入ってこられました‥。果してそのご希望通り、街には近いけれどそこは別世界。「朝日とともに起きてきて~♪、夕日を眺めて寝てしまう~♬」というカメハメハ大王のような(これはないです…笑)素敵な暮らしを手に入れられた(ぱちぱち)。

皆さん、都心までの(比較的)良好な交通利便性は確保しつつ、のんびりとした日常を楽しんで居られる。そのいい塩梅のエリアが多摩丘陵であるというわけですね。

そうなのです、このエリアは多摩川を挟んで東京と向き合うフロントライン。ここで気ままに暮らしながらも、一旦緩急あれば街へと駆け付ける。まるでその姿は、英国の田園に居を構えつつ有事の際には最前線に赴くジェントルマン、ひいては鶴川に居を構えて都心に睨みを利かせた紳士、白洲次郎翁を彷彿させるじゃないですか。(曲解しすぎ、スミマセン)

そういえば随分と昔に塩野七生さんの著書で、ジェントルマンの語源(起源?)はイタリアに在りと読んだ記憶があります。その始祖である伊版ジェントルマンについては最早(ボクには)定かではありません。しかし本場英国のそれを経て、多摩丘陵に住まう顔ぶれにもその心は受け継がれている、そう思うのは多少無理がある…か(笑)。

かくいうボクも、鳥が鳴き樹々が茂る環境に身を置くひとりですが、まさに先日「一旦緩急」あって街まで駆け付けてきたところです。

「ランチビール‥」

アホか‥。しかし、のほほんと暮らすボクにとっては、これは一大事。懐かしい顔からの誘い(誘惑か‥)に押っ取り刀で馳せ参じ‥へへ。