奥多摩の杉

杉無垢床と漆喰壁

「メニアオバ カベニシックイ ユカニスギ」 眩しい新緑と抜ける青空を背景に鯉のぼりが泳ぐ、そんな季節はあっと言う間に過ぎ去っていきました。

独立して間もなく、奥多摩地域にある製材所に出向いたことがあります。「山を育て、樹を伐り、木を運び、製材して木材へと生まれ変わらせる」仕事場を見せていただきました。まさに東京の木、地元産といえる木材を身近に感じた出来事です。

地産地消という言葉、首都圏でも食物に関してはよく耳にします。住宅についても、昔は地元の木材で普請するのが当たり前のことでした。しかし現在、木造でさえハウスメーカーが主流となっているわけで、近年生まれたマンションにとって地産地消は縁遠いものです。高効率に大量の住戸を生み出すコンクリート建物は、規格化された住宅用建材と一心同体とも言えるものですから。

それでも、時を経て少しやわらかく角が取れたような建物には、つるつるぴかぴかな新建材とは違う手触りのある内装が似合うような気がします。だから僕は、僕の手掛ける少し古くなったコンクリート建物の中身に、なんらかの味わいを残したいといつも考えています。

その一つのかたちとして、独立当時から今に至るまで、裸足の似合う気持ちのよい床材として、この地元産杉無垢材を使わせていただいています。

長さ4m、継ぎ目のない杉無垢フローリングが敷き込まれた室内は清々しいほど。それにしても、この長さの床材をマンション室内に搬入するのはたいへんです。EVも階段室も通れません。

どうすると思いますか?このフローリングは1~2階限定です。なんと、ヨイショと窓から搬入します。なんだかまったく効率的じゃないですよね…。

 

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