集合住宅という響き

DSC_2752

「それで、いけだ君はうちの会社で何やりたいの?」

「集合住宅です、街に小さな風景をつくるような。大規模開発ではなくて…」

「集合住宅って言う? 普通、マンションじゃない?」

「そうですよね。でも自分のなかでは”集合住宅”なんです。」

「?」

これは、翌年入社することになる不動産会社を初めてOB訪問した時の話。時はバブル期、欧米関連部署にいる多忙なOBに「マンションではなく集合住宅ナノダ」と情緒的な主張をしても、「?」となるのは当然であって…。

以来、そんなこんなで集合住宅、もといマンションに一貫して関わってきました。大規模マンションから低層マンションまでを開発し、地域に張り付くマンションギャラリーも開設しました。規模の大小、地域の特性こそあれ、どれも見紛うことなき”マンション”でした。これも当然ですが…。

そして会社を離れ、独立して10余年経ちます。学生時代に夢想した集合住宅像は何処かへ飛んで行ってしまいましたが、独立後に僕が手掛けてきたリフォーム住戸の殆どが昭和末期の建物。どこか落ち着きと暖かみ感じさせる、暮らしやすそうな建物を選んでリフォームしている自分がいます。三つ子の魂でしょうか。

ところで、前掲写真の書籍は植田実著「集合住宅物語」。私が”シュウゴウジュウタク”と知った顔で発声するのが恐れ多いほどの「ザ・集合住宅」ばかり。戦前の同潤会アパートから戦後のヒルサイドテラスまで描かれています。僕が物件化を検討した”マンション”も載っていてニンマリ。

一体、お前の言う集合住宅とはどういうものなのだ?-と言われてしまいそう。でもどこか違うんですよね、マンションと。それはまたいつか。

Facebooktwittermail