童心

世界を魅了した、ピアニスト反田恭平さんのショパン。楽しげなコロコロとした音‥、その音を出す時は(自身の)こどもの頃を思い浮かべている、と書いていました。なんか良いハナシだなぁと思っていたら、デザイナー深澤直人さんのエピソードも思い出しました。

世田谷に新築したアトリエ(自宅兼仕事場のこと)について。子供の頃、似たような絵を何枚も描いていたそうです。その絵とは、十字の格子窓、オレンジの大きな木がある小高い丘の家。それが深澤少年にとって家の原風景となりました。それから幾年月、ついに実現したアトリエには、どこかその面影があるようです。(写真を見ました。素敵過ぎてまるで別モノですが(笑)、どこか相通じると言えばそうでもアル‥)

小さい頃の想いや記憶は、心の奥深くに眠っている。そして、思わぬ時に湧き出てきたり、創造の源泉になったりするのかもしれません。

ところでいきなり話は身近にZoom In。ボクは子供時代のひとときを、自宅の裏山に白鷺が飛来するようなカントリーな地で過ごしました。

春、水ぬるんだ用水路でカエルの卵を掴み、山に入りて竹を取り(竹取の翁か!)、弓矢をこしらえ切り株に放つ。

夏、早朝の虫取りは蜂に襲われ退却、桑の葉摘んで育てた蚕(かいこ)は、気付けば天井四隅で蛹(さなぎ)となって(その後は、ううっ‥)。

秋、夕暮れに草野球、ガラスを割ってシュンとして。沼で釣ったザリガニは、留守の間に共喰いし‥(またシュンと‥)。

冬、焚火に焼き芋、こたつでミカン。広場で揚げるはゲイラカイト(ご存知ですか、よく揚がるのヨ)‥。

そんな風に、朝から夕暮れまで駆け回っていた時代。でも、一番記憶に残っているのは自宅の小さな庭の昼下がり。「春の陽射しと干した布団の匂い」(ホコリだったのかも‥)。

今も住まいをつくる時、太陽に向いたバルコニーに出て、目をつむってみる。まぶた越しに届く暖かい陽射しを受けて思うんですね、ここは良い部屋じゃないか!って‥。

心地良い光と風さえあれば、それでもう充分じゃないか‥。

オジサンになった今でもそんな気分になるのは、こどもの頃の記憶以外の何ものでもない。冒頭の著名人に重ねて、そう思うのです(重ねるな!)。

啓蟄を過ぎ、今は「The 春」。あちこちに、目覚めた生き物たちを見掛けます(おー、隣でアリが初仕事に取り掛かっていますなぁ)。虫たち同様、ボクのコドモ時代の記憶も目覚める季節。

果してその目覚めは、何かが湧き出る創造の源泉か、それとも単なる老化の産物なのか‥。

いずれにしてもよい季節を迎えました。花粉さえ少なければねぇ‥

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