暑さ寒さも‥

買取再販。
買い取った不動産を再び販売する「お商売」のことをいう。

「買取」+「再販」と表記する通り、「安く買い」+「高く売る」。つまり「リフォームの有無」や「リフォームの程度」は買取再販の定義に入らない。

誰がこれをシゴトとしているのか…。
まず、上場している買取再販専業の独立系(再販大手と呼ばれる)やそれに準ずる業者。
それから、大手仲介会社の一部。仲介のついでに「それならウチで買いますよ」と、「いきなり再販業者」に変身する。
それらを頂きとすると、裾野にはウチのような零細がゴマンとある。まさに種々様々である。
事業への障壁が低いので(ホントウに低いのかは別として)、不動産業者はみーんな再販業者(or予備軍)とさえ言えるかもしれない。

不動産業の要諦は立地と価格(端的にはそういうこと、つまらん話だけど)。室内はきれいに越したことはないが、内装が素晴らしいからといって高く売れるわけではない。そういえばボクも、仲介の大先輩に「お前、内装にそんなにカネかけるのかよぅ」と呆れられたことがあった。

そんな不動産業界ではあるが、ここ10年位でリフォーム・リノベ工事の基準なども整理されてきた。「安心して住めるリフォーム済マンション」というカテゴリーもポピュラーになったように思う。
この変化は不動産業界単体というよりも、建設業界との際(きわ)の部分に起きた変化。つまり近そうでいて実際は遠く、溝が存在する「不動産業界」と「建築業界(設計も)」の接点部分における進展なのだと思っている。そう、二つの業界が近づくと物事が進化する。進化のポイントは業際にあるんじゃなかろうか。

但し、大手が参入すればするほど、早く安く大量に均質なモノづくりが進む(中古マンション自体は均質ではないが‥)。それは新築マンションの供給と同じ方法。だから破綻なくキレイではある。

となると、そのリフォーム内容は無難で、万人が受け入れ可能なものになっていくのだろう。別にそれが悪いわけではないが。(でも「万人」という「個人」は存在しないから、誰も喜ばないということもあり得るな‥)

であればこそ、ウチも常日頃「誰にでも受けるリフォーム物件」にすべく、時には「振り切りたい衝動に駆られて」脱線し(かけ)ながらも、あるべきセンを守ってきた(つもりだ)。(ホントウか‥)

そんな日々の中で、最大公約数を旨としない個別リフォームを(たまに)ご一緒することもある。そう、「たまに」ご一緒するのがちょうどいいのだ、ボクの場合。

上のリフォーム写真には、リフォーム主のご実家にあったステンドグラスが使われている。「いつかその機会があれば」と倉庫に眠らせていた建具だという。子供時代の懐かしい記憶が埋め込まれた、唯一無二の住まい。

彫金が施された蓋つき鏡のアンティークも施主所有品。壁には色むらが味わい深いモザイクタイル、そして仲良く並ぶステンドグラス‥。実は玄関を入った正面にも、帰った人を迎え入れるようにステンドグラスが嵌め込まれている。
明かりを灯すと、温かく懐かしい。時と場所を越えて、何処か遠くに居る気がする一角となったと思う(夕刻時には一層のことだろうな)。

ちなみにこの施主は服飾デザインの専門家。建築と服飾、どちらもデザインという領域でつながっている。今回のリフォームにおいては、(自邸であるから尚更のことだが)隣のデザイン領域での豊富な知見が生き生きと発揮されていた。

領域の際(きわ)に神は宿る。あちらとこちら。お彼岸に寄せて、そんなことを思ったワタクシだった。

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