中庭考

中庭考、すなわち中庭についての考察。マンションの中庭について何か書こうと、「中庭考」という表題を決めて、その文字をジーっと眺めていました。ん、何やらミオボエあるような。

中田考。そうです中田考さん、イスラム学者であり、本物のムスリムです。ひと頃はアラブ世界についての解説でよく見かけました。僕も最初の渡航地に北アフリカを選び、後にも再び地中海を越えているほど、その地域にどこかしら近しさを感じており、中田さんの書かれる言葉もすんなり入ってきます。(もちろん僕が歩いたのは広大な宗教圏のごく一部ですから、何も知らないに等しいのですが‥)

そんな彼の地といえば、中庭です。乾いた風と強い光から身を守るように、集まって集落を形成し、家々は外に閉じて、中に開くとでも言いましょうか。僕が何度か書いている、小さな空間に無限の広がり、という世界観がここにもある。ような気がします‥。

ということで、元々はマンション敷地の空地を活用した中庭について書くつもりだったのですが、一つの住戸の中にある中庭に変更です。(それじゃぁ、写真も差し替えだ)

マンションの名称でもCOURT HOUSEなんてのがありますね。そのCOURT(中庭)は、マンションを一つの住居と見立てて一つ中庭があるのか、それとも各住戸が中庭を持つのか、それはわかりません。もちろん、どちらも無いものも有りますが。

いずれにしてもマンションにおいて、住戸ごとの中庭って難しいです。上に伸びるマンションでは中庭が出来るのは1階だけで、上階では中空となる‥。そして縦に何層もあるマンションの場合は1階も庭でなく、暗い穴です。ですから、高層建築はもちろんのこと、低層マンションだとしても、各住戸に付属する気持ちの良い中庭というのは難しいものです。

では何故、マンションの個別住戸に中庭がつくられるのか?→「ステキだから!」「より良い住まいを…」→うーん、そうであればニッポンのマンションは もっと楽しく、ワクワクするモノになっていたでしょうね。

答え→外側に開いて採光を取ることが出来ない部屋があるので、内側に開口して居室として成立させるため(答えココマデ)。住戸が南北にびよーんと長かったりすると、真ん中に穴をあけて採光を取る。低層ならではのプランです。なーんだ‥。

でもそれがうまく転じると、なかなか素敵な感じになるんですよ。ということで写真の住戸。

前述した設計上の理由で設けられたと思われる中庭。そこに面した個室がひとつ。そこでその個室を、中庭に面した住戸内の公共空間(パブリックスペース)のように仕立てました。要するに、壁を撤去して個室を廊下に開放した、ということ。一日中光量も安定して、落ち着くスペースです。壁の代わりの一部に、木製縦格子ルーバーを造作することで、玄関方向からの視線もカット(格子の太さ、奥行、間隔が絶妙で、空いているのに見えない)。

僕はアームチェアとアンティークの本棚置きたい、なんて(勝手に)思っていました。どう使っていただいているでしょうか。購入時、この場所が一番、と仰ってくださいました。でもね、この住戸には他にも心地よい空間が幾つもあるんですよ。もしかして一番の場所、変わりましたか?

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