小さくて大きな安心

photo by STUDIO GHIBLI

イタリア車を30年間乗り継いできました。その数6台(その外フランス、日本も初期に複数台)。最近まで乗っていたモノも全て80年代~90年代前半のクルマです(21世紀のクルマがない)。そして今年、イタ車を全て返上し、初めて軽自動車に乗りました。それも荷物が積める四角いバン、トール(高く)&ナロー(細い)な一台です。

小さくてタフなエンジンは粛々と回り、細くて小さなタイヤは路面をズズッと滑りながら(これは楽しいナ)、ターボで加給してグンと車体を押し出します。心配していたエアコンも、炎天下でさえ上等、上等。ああ、安心‥。こんなに安心してクルマに乗るのは、いつ以来だろうか、と。

これまで、クルマの異音や異常に感覚を研ぎ澄ませながら(会話ともいうが…)、いつどこで緊急停止してもいいように緊張感を持って運転をしていたものです。

実際に、立ち往生は数えきれないほど。首都高速上から海岸沿い、そのあたりの道端まで、キュゥと言って止まる可愛いもの(カワイクない‥)から、火を噴いて即時消火が必要なものまで、もう思い出せばうんざりするほど‥。何度ローダー(車輛ごと載せてもらうトラック)のお世話になったことか。そして、何度もう嫌だイヤ、と思ったことか。でもそんな日々は30年間続いたのでした、ハハハ、ハ‥。

そんな中で今般、ピッコロ(背はデカいが)なクルマを選びました。仕事に徹するシンプルで簡素な造りに、ある意味小型イタリアンカーに通じるものを感じて‥。

これが思っていた以上に正解で。これまでのような悶絶する心配のない、タフで(いろいろな意味で)安価で、安心できる環境にホッとした。それどころか、いやコイツが却って良いなあ。そう思っているところです。

家もそうなだなあと、常々思います。もちろん、危険でなく安心な方がいいね、という意味ではなくて(これはそもそも最低限の要件ですね)。どちらかというとコストのハナシ。住宅ローン、税金、電気代など費用全般が嵩(かさ)む家はつらいな。僕のクルマでの緊張感とは似て非なるものだけど、いつもお金が飛んでいく緊張感。そんなものがない家は、自分が穏やかでいられるのではないか、なんて思ったりして。

更に言えば、住宅設備機器も似たようなモノ。シンプルに粛々と仕事をしてくれるのが良いですね。欲を言えば永く使えて、愛着を持てるすっきりとしたデザイン。そういえば、ウチで十年来活躍しているのはイタリアメーカーの小さくてシンプルな電気式オーブンです。すっかりくたびれてシミだらけだけれど、そんな姿が愛おしい。パンから魚、肉料理までなんでもござれ、スイッチはダイアル3つのみ。

その前に使っていたのは、衝動買いした過熱水蒸気調理の高級機種。使いこなせないどころか、あっという間に動かなくなってしまったのです(ただの電子レンジに‥)。ついでに言うと殆ど同時期に、このメーカー製の(プラズマみたいな?)エアコンから同じメーカー製TVの上に漏水して、どっちもダメになってしまったのだ。製品が悪いわけではなく、僕と高機能機器と(そのメーカーと)の相性が悪いというだけ。なのだろうと思う。

長らく乗っていた殆どのクルマたちも、電子的には極めてシンプルなものです(機械的には複雑なモノもありましたが)。そんな僕と相性が良いはずの古いクルマたちでさえも、寄る年波には勝てず、パーツ欠品に悩まされて、手を離れていったわけです(金の切れ目が‥)。頑張ってくれ、イタリアンオーブン! まだまだ当分の間、君の修理部品は大丈夫そうだから。

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