お若いんでしよ?

中学生の頃、通っていた床屋でのこと。髪を切ってくれている、パンチパーマに髭と色付眼鏡のお兄さんが、(意を決したように、とボクは感じた)唐突に僕に話し掛けてきた。

お兄さん:「お客さん!」

おいら:「はい?」

お兄さん:「お若いんでしよ?」

おいら:「はい、中学生ですから(このシト、ナニいっとるんだ…)」

お兄さん:「ですよね!」

マンションにも、築年数がそこそこ浅いのに随分と老けて見える建物がある一方で、年数が経過しているのに若々しい建物もある。また違う観点で見ると、若くても(星霜を経たように)風格を感じる建物もあるし、いつまで経っても厚みが出ないモノもある。

果して、パンチのお兄さんにとって、中学生のボクは一体ナニモノに見えたのだろうか。(思い当たる節がなくはないけれど‥、ハハハ)

ところで、建物の見た目の年齢や風格の違いは、どこからくるのでしょう。管理? 外観?、それとも立地、環境? 

当社では、自社で取得してリフォーム後に販売するほかに、顧客の住戸購入からリフォームまでをご一緒するケースがあります。どちらの場合も物件に(表面的な)若さを求めず、古くても(or今後古くなっても)味があるような物件を選びたいと考えています。単に築年数が浅くて(今は)キレイだからいいね、という選び方はあまりしないのです。

樹々があるのは七難隠す‥。きちんと管理された樹木が敷地内に茂っている集合住宅は、建物自体には特徴がないとしても素敵です(※効能には個人差があります)。逆に樹木がなく、若さが売りのマンションは、中年期(!)以降は建物だけ(デザイン、質感、管理状態?)で勝負しなければなりませんから、一層シビアです。

樹々があれば、重厚なタイル貼りや立派なエントランスがなくてもいい、と僕は思うクチ。ところがマンション建築の際、植栽は一番最後に計画されることが多いのですね。つまり建物(や共用施設)が配置されて、残った場所に緑をちょんちょんと置いていく感じでしょうか(特に既存宅地の中小規模のマンションは‥)。ですので、樹木一本や生け垣をレイアウトすることさえ難しい、というケースが散見されるのです。ちょっと残念なことです(止むを得ないことはよーく判っています、仕事にしていましたから‥)。

樹木推進を阻害する要因として加えるならば、樹木の管理には費用と労力が掛かるということ。年に何度かの剪定や消毒があります。隣地に越境したり、落ち葉を掃いたり。育ちすぎて日照を阻害して、組合員から苦情が来たり‥。成長した樹木を、組合の決定によって伐採してしまう、そんなことも起こっています。

若いってことは、単純に素晴らしい。古い建物も、シミを除去し(外壁塗装)、血管年齢を若く保ち(配管交換)、若々しく健康であって欲しいもの。でも若いだけじゃなくて、築年数相応の落ち着きや風格を備えたマンションであるならば、尚のこと良いですね。そんな建物ならばこれから先も変わらず、(比較的)緩やかな経年変化をしてくれそうですから。

数字に表れないそんなところに、たくさんのマンションの中から気持ちよく暮らすための1戸を選ぶヒントが隠れているかもしれません。

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