石の壁にも三年

以前に販売した物件の写真を見ていたら、これが。

ただのキッチン‥。

たしかにシステムキッチン自体はシンプルの極み、四角くて白い箱。設備機器についても、火が出る、水が出る、空気を吸う(換気扇のこと)、それだけ。食器洗浄機、浄水器、ビルトインオーブンも、なーんにもありません。

なのにキッチンの壁だけ、えらくゴツイですなぁ‥。

そうです‥。実はこれ、天然石を貼っているのです。大きめ独立型キッチン(w2,700㎜だったか)の壁なので、かなりのボリューム感と重量です。

工事の手間も随分掛かりました。あまりの大変さに、現場に居合わせたメンバーが見て見ぬふり出来ず、他の職人さんから設計者まで皆が総出で手伝って仕上げたという、いわくつきの石貼りキッチン。ちなみに僕は当時、幸いなことに(?)現場に居りませんで‥(ごめんなさい)。

「すんごいタイヘンだったのよぉ~、もう二度とやらないわ(キッパリ)」という訳で、わが社(のコスト)では幻の仕様となりました、とほほ。(リフォーム済販売住戸ですから、やり過ぎはいけませんね)

ちなみにこの住戸、壁は漆喰の左官仕上げ、木製の扉は現場で塗装、とキッチンだけに留まらない手づくり感満載のリフォーム済中古マンション。若カッタネ‥

そんな風に手を掛けた住戸も、販売してから随分と時間が経ちました。ガスコンロ前の油はねも、いい味わいになっていることでしょう。同じくキッチンの経年変化を楽しむ素材としては、レンガタイルもいいですね。以前見掛けた(デザイン関係の方がリノベートした)キッチンでは、木製天板と煉瓦壁のラフで古色蒼然とした雰囲気が、もはやマンションというより山小屋の域に達していました。汚れが染み込むのがいいのだ、とのことでしたが同感です。

実は、会社設立時の事務所(代々木公園)の壁も、セルフで塗ったホタテ漆喰でした。10年経っても白さはずっと変わらず、ホコリも付きにくく(静電気が発生しないのだと)、オマケに心なしか空気も良い(たばこ吸いませんけど)。

もっと言うと、同じくこの事務所への入居時、床には(例の)奥多摩産杉無垢材フローリングも敷きました。古色の天然塗料である久米蔵を塗布した、濃茶の床です。土足で過ごしましたが、退去後も貼替不要、きれいに洗って再利用されています。

自然素材を使った我が旧事務所は、壁・床ともに10年後の塗替え・貼替え無しのまま、次のテナントにバトンタッチができた様子。なんかいい感じですね、ザラっとした自然素材。ちなみに今の事務所はツルツルです‥。

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