山小屋からこんにちは

洗練とはかけ離れた素朴な室内、リフォーム後に販売した住戸です。厨房の中から食堂(そう呼びたい感じ‥)側を覗いています。

住戸中央に厨房と食堂、その南側(主開口部)に居室が二つ並ぶ昭和50年代半ばの典型的間取りです。通常、この間取りの場合には食堂に窓がなく、南側居室の(引戸を開けて)採光を得ることになります。ですのでリフォームの際には、食堂に光と風を取り込むようにプランをあれこれ考えるのですが、本件は凸凹させた住棟計画が幸いして食堂に窓がありました。では基本プランはそのままでいきましょー、というわけです。

厨房の水廻りや排気位置は変更せず、食堂との間を閉じていた壁を撤去して、背面カウンターを造作しました。カウンター上部には写真の通り躯体の梁が下がっていたので、カウンターの天板を延長させて、床から側面→カウンター天板→側面→梁下に棚を間口左右一杯まで、同じ材料・奥行のまま一筆書きのように木製天板を走らせました。シンプルですが、ちょっと面白いカタチになりました。

食堂に目をやると、奥には山小屋かログハウスのような壁。これは木目のビニルクロスではありません‥(ていうか、木目クロスを貼るなら、わざわざ安そうな杉板の模様にはしないですかね。僕以外は‥)。これは無垢の羽目板、それも節のある杉なので見た目にログハウス感がモリモリです。見た目だけでなく、近くに寄って触れてみると、暖かで厚みもあり素材に包まれるような安心感があります。壁一面の無垢材は目線に近い分、床材として使う以上に五感に訴えるものがあるかも知れません。

この住戸には、同じく杉材の扉なども採用しており、杉濃度が高め。購入されたのは、そんな素朴な感じがお好みで、お母さん自身が(スタジオ)ジブリ大好きとおっしゃる親子でした。

そのジブリですが、実はこの物件(に限らずウチの物件)の設計から現場までを担当した女性は、ジブリ美術館の建築工事に関わっています。ジブリ側(あの人たち‥)と設計側(&ゼネコン?)、両者のかみ合わない言葉を翻訳(!)する仕事に(途中から)引っ張り出されたのだとか。要するに、四角いものは四角くないといけない設計側と、そんなこととは違う世界の住人側では、造れるモノと創りたいモノが食い違ったようなのです。ジブリ側の誰か曰く「やっと話のできる人がきた!」だったそうです。言語が違うんですね‥(想像つきますよね、ハハハ)。

話は戻りますが、この住戸は床に無垢材が採用できない代わりに、壁に羽目板を使ったという経緯があります。素朴な雰囲気が好きで何度か使っていますが、せいぜい壁一面とプラスアルファ程度です。不特定少数(!)の方に向けての販売用住戸ですから、その程度で止めています。(濃すぎは禁物ですから)←って充分濃いか‥。

でもログハウスのように、ひと部屋だけを全面無垢材で囲ってみたいですね。できれば、窓の外に緑を望む部屋を選んで。緑の眩しい昼間も、しんと寝静まった真夜中も、きっと落ち着く居場所になるでしょう。山小屋にようこそ!

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