無用の用

営業マン:「こちらが、洗面室でございます!」(快活に)

お客さま:「ほー」

営業マン:「こちらは、お便所でございます!」(堂々と)

お客さま:「おーっ」

随分と前になりますがウチの物件で、ある担当者がこんな案内をしていました。別に、洗面や便所に特別な特徴がある物件では「ございません!」。それなのに‥。このふたりの遣り取りが可笑しくて、稀に思い出しニヤッとしてしまいます。ボクが仲良くしていた営業の方なのですが、その爽やかさ(?)のお陰か、購入希望者の案内だけでなく、売却を希望する物件所有者からも信頼の厚い、デキる営業マンでした。

ところで、彼が上の写真のような物件を案内したら何と説明するでしょうか。ちなみにこの空間は、廊下の途中にある元・洋室ですが、現在は廊下側一部に縦ルーバーを配しただけの廊下一体型ホール状になっています。なお奥行のあるルーバーは見る角度によって完全に’壁’となるので、オープンスペースでありながら玄関からこの空間は見通せません。

「こちらは、ドアと壁のない部屋でございます!」

彼なら、そんな風に言ったでしょうか‥。

いや、彼の真っ直ぐな性格から考えると、お客様を前に「‥いけださん、この場所は何とお呼びしたらよいでしょうか!」(大きな声で)

とボクに聞いてきたかもしれません。わからないことを、わからないと言うことは大切ですね。逆に、売主(ボク)の横で、立て板に水でスラスラと(結構いい加減なことを)話す営業マンもたまーにいますが(笑)。(あ、それおいらか‥)

さて、写真のスペースは、何とお呼びしたらよいでしょう。そういえば販売時は何と呼んでいたっけ?(図面を見てみたら「ホール」と記載していました)

いずれにしても、「お便所」や「洗面所」のようにわかりやすく決まった用途はありませんね。いや、トイレや洗面も(本当は)その名称通りの用途に使われていないかもしれないし、目的を限定すべきではないのかもしれない‥。(それじゃぁ一体、お便所を何に使おうというんだ!)

そうです。部屋の用途を特定する、そんな行為が(ただでさえそれほど広いわけでもない)住戸を、もっと窮屈にしているのかもしれません。そんなことを思ったりします。

もっと言うと「ここ何する場所?」のような、「よーわからん」場所があると、その無駄(に思えるもの)が暮らしに別の何かをもたらしてしてくれるかも‥。

Doing nothing often leads to the very best something.

なんにもしないことをすると、いいことがあるんだ。(意味はこんな感じでよいでしょうか‥)

くまのプーがそう言っていました。「何をするか決まっていない場所」と「何もしないことをすること」。ちょっと意味は違うけれど、似たような効能があるかもしれない。

さあ、なんにもしないことを、しよう。

でも、どうやってするんだろう。ウンと‥ウーンと‥

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