近産近消

やってまいりました、ながーい木材。現場に整然と積まれたこの床材の長さは4mあります。ここは団地の一室です。なにか、ちょっと違和感がありますね‥。

ここで問題です。

問1.「4mもの長さのある床材をどのようにして室内に運び込んだのでしょうか。なお、ここはエレベーターのない2戸1階段タイプの建物です。」

それでは問2.「この住戸は何階にあるでしょうか。」

それでは回答を‥

問1:「 窓から入れた」

問2:「2階」

どうでしょう、正解できましたか。(んなもん、わかるか!コラッ!)

この長ーい無垢材が部屋の端から端まで、真っ直ぐに継ぎ目なく貼られた床は気持ちの良いものです。

ところがマンションでは殆どお目にかかりません。だって、エレベーターに入らないし‥。そもそも階段も共用廊下も、そして室内でも角を曲がれませんね。だから、通常のマンション床用建材は900(長くても1800)mm程度に加工されているのです。

でもボクは近場でとれたこの床材を使いたいと考えているので、解体が完了した室内の窓から真っ直ぐに搬入してもらっています。となると搬入には限界がありますね。4mの床材を窓からびろーんと室内に入れる様を想像してください。何階まで上がるでしょうか。ちなみに1階分の階高は3m弱です。そうです、せいぜい2階まで。地上から3階住戸への垂直方向受け渡しは、手を伸ばせばできるかもしれませんが、3階の窓で受け取った人は一体どうやって室内に入れるのでしょう‥。ということで、この床材は基本的には低層階に限定して使用しています。

この床材は奥多摩で育ち、製材されてここにやってきました。かつてその辺りにはナラやカシなどが育つ自然林が広がっていましたが、江戸時代(江戸は火事が多いので随時需要があったそうです‥)から第二次大戦中に亘る乱伐によって姿を変えてしまったと聞きます。そして需要に応じるように杉や桧の大量造林が行われて‥。にもかかわらず、次第に外国産木材に押されることになってしまったのですね‥。(国産材の活用には復活の兆しもあるようですが‥)

ということでウチは杉を使うことが多いのですが、もちろん桧もあります。上の写真はヒノキの床材。杉とは違う桧の効果も見込んだクライアントのご希望です。杉よりも白く、きめが細かく、キリっとした鮮烈な香り。ブランド産地でなく無印ひのきですが、それでいいのだ。

ちなみに桧と言っても和風ではありません。北欧の素朴な暮らしにイメージの源泉を求めた今回のリフォーム、節有りのカジュアルな白木は却って北の国の温かさを想起させます。窓外に広がる空や緑と相まって、落ち着いた素敵なお部屋に仕上がる予感があり、クライアントと共にボクもワクワクしています。

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