帰郷

黒目がちの赤ちゃん、たくさんいますね

目視で確認したその数、少なくとも40匹以上。去年の夏にカマキリ母さんが産み付けたたまごから、赤ちゃんたちが飛び出てきました。本当は100匹以上いるらしいのだけれど‥。

あんな小さな卵鞘(ランショウというのだそう)にどうやって納まっていたのでしょう。そろそろ出てくるか?とウオッチしていましたが、残念ながらその場に居合わせることはできませんでした。皆、既にあちこちへ離散している様子。

ここ数年続けて見掛ける光景です。梅雨前の今頃に赤ちゃんカマキリが生まれ、あっという間に見掛けなくなったと思ったら、秋にデカいのが現れる。そして写真のような草木(これはローズマリー)の枝や、手摺の裏側などに産卵していくのです。

生まれ出た瞬間から、自力で生きた餌を獲り、生き抜かなければならないカマキリの人生(?)は過酷。一つの卵鞘から出た兄弟たちが全滅することも珍しくないようです。当初は赤ちゃん同士、最後にはオス自身が栄養としてわが身を供することさえある。つまり、共食いをしてでも、残った一匹が子孫を残す。そんな壮大な仕組みには驚嘆します。

カマキリの孵化が(一般的な)春ではなく、少し遅れて夏近い時期であるのは、餌になる昆虫が豊富になる時期を待っているから。なるほど陸上昆虫の王者は、満を持して登場するわけですね。

上の写真の赤ちゃん達を産んだ去年のカマキリ母さんも、ここでワァーッと生まれた中の一匹だったのでしょうか。そして、ひと夏をこの辺りの草むらで過ごして、最期に生まれ故郷に戻ってきたのかな。カマキリに帰巣本能があると聞いたことはないけれど、逆にずっとこの(狭い)場所に居たとも思えないし‥。

カマキリ母さんは故郷に戻ってきた(のかもしれない)と書いていたら、小中学生の頃に聴いた歌詞とメロディが、想像の情景と共に鼻歌となって浮かんできました。

朝もやを抜けて / 汽車は走る 遥かな道を / 僕をのせて 疲れた心を / いやすように 汽笛は響く / 野山越えて やがて青い / 空がのぞき もうすぐ帰る / 僕のふるさと‥

わずかな荷物が / 僕のすべて まぶしい日射しが / 時を笑う 朝もやを抜けて / 汽車は走る 見慣れた景色が / 窓を飛びかう 忘れかけた / 僕の笑顔 もうすぐ帰る / 僕のふるさと‥

そう、松山千春さんの「帰郷」。映る情景は彼の故郷である北海道でしょうか。であれば、そこは幼い頃の僕も一時期だけ暮らした場所。

そして、会いたい人が暮らす土地でもあります。北海道を故郷に持つ後輩(仕事上の同志でもあった)は東京での暮らしに見切りを付け、「帰郷」の歌詞の通り、まさに帰郷しました。今もその地に暮らしています。

そんな彼と十数年ぶりの邂逅の機会が巡ってくるようだったのですが、ここ一年の混乱でそれはなくなりました。いつか会えるのでしょうか。いや、会えなくてもいいのかもしれない、とも思うのです。頑張っていますか、と心の中で問いかける。そんな友とのカタチもあるのではないか、と。(Facebookでいいじゃんか‥ねぇ)

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