あきらめが肝心

僕が無垢材の床を好きなのは、よく傷が付くから。‥‥変な理由ですよね。

杉は床材の中でも特に柔らかいので、すぐに傷が付く。すると最初は、あぁーーっ!と落ち込む。また傷が付き、そして傷だらけになり、もういいやと諦める。その頃には傷跡が落ち着き、馴染んで味になることに気づく。

要は、工業製品のピカピカ新品状態をキープしようとしていた自分を諦めることができる訳です。建材メーカーのフローリングは購入時のキレイさを失わない。だけど一度傷が付くと下地が出てきて悲しい状態になってしまう。つまり経年変化という概念があまりないのです。

よく言われることだけれど、住宅用建材の多くは新品が一番いい状態で、あとは劣化していく。経年変化でなく経年劣化なのです。

杉の床は時間の経過を楽しむことができます。家って、時間と共に愛着がわくんだ、と気付くきっかけをくれます。ゆったりとした有機的な時間、そんなものを改めて教えてくれるような気がします。

オーク材など堅い木も同じです。敢えて傷をつけるビンテージ加工があるくらいですから。まるでジーンズみたい。杉よりも堅い分、あぁーーっ!という叫び声を聞くことが少なくて、家が穏やかでいいかもしれません。


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