夏休みの

「あおいそら、しろいくも」

小学校に入学して、はじめて開いた国語教科書に載っていた言葉です。その言葉だけ、春の空気感と共に記憶しています。他のことを覚えていないのは、あっという間に馴れて擦れてしまったからでしょうか。

そういえば、中学校で最初の英語授業‥。「じゃあ、みんなで!」と一斉に発声した「たーいがっ!」。爺ちゃん先生の焦げ茶のジャージと共に切り取られています。なお、「たーいがっ」は「tiger」。でもって、プーさんの仲間のトラは「ティガー」ですね。

さて、同じ「青い空、白い雲」でも上の写真は夏の盛り、大きな団地の一角です。脇のベンチに座った親子が自販機の飲料を手に話し込んでいましたが、じきに立ち去ってしまい、聞こえるのは蝉の声ばかり。

大きく育った樹々、高くて青い空、ジリジリと照る日射し。時が止まり、いつまでも続く夏休み‥。そんな気がする日曜日、お昼前のひと時です。

それにしても、「青い空と白い雲」を引き立てる「樹々」が大きく豊かなこと! 当時の団地は空地が大きく取られており、そのほとんどに何らかの植栽が施されていたのですから、何十年も経てば自ずと公園のようになるわけです。

航空写真を見るとわかりますね。戸建や集合住宅がギュッと詰まった密度の濃い住宅地のなかで、縮尺が違うのではと思うような一画があるのです。白い箱が点在し、その隙間を埋めるように緑が見える。まさにその場所が公団の分譲団地です。

当時の団地開発に際しては、できるだけ敷地外に土を出さないことを原則としていたと聞きます。造成を最小限に抑え、従前の敷地形状を活かして建物を配置していったのでしょう。歩いてみても確かにその通り、建物ごとに地盤面の高低差があり、建物の向きも大きさも、微妙にまちまちです。四角い豆腐のようだと揶揄される建物が並びながらも、決して無機的ではない空間だと感じます。

今となっては新たに望むべくもない、ずっと夏休みのような場所‥。いつもはバタバタと往き来する団地ではありますが、ふと立ち止まり、改めてそんなことを思ったわけです。

Facebooktwittermail