変わらぬものに

上の写真は、物件選びからリフォームまでをご一緒したMさんからのいただき物。同じお店のお菓子を二度もいただきました(モノ欲しそうに見えたか‥エヘヘ)。お住まいの地元にある老舗洋菓子店だそうです。手作り感を残した品の良い焼菓子。シンプルな材料を贅沢に使って作られた美味しさは、駄菓子好きのボクにだってわかるくらい。

後日、たまたまWeb上でこの店を目にしました(普段ならスルーでしょうが、このイラストは!と)。有名店なのですね、地元マダムも子供の頃から‥と紹介されています。載っていた人気商品のひとつが、創業以来のクラシカルなケーキ。あれ、これ食べたことあるぞ。ボクが幾つも物件を手掛ける駅にある洋菓子店のそれと瓜二つ、ケーキの名前も同じです。つまり、多摩丘陵の小さな駅前洋菓子店にもあったということ。

でも、ダミエというそのケーキ、他所(よそ)では聞かないな。もしかして古典的すぎて、もう誰も作っていないだけなのでしょうか。ちょっと気になったので、そのケーキの名前で検索したところ‥、「Mさん地元の洋菓子店」と「こっちの洋菓子店」ばかりが出てくるではありませんか。

流石にこれは何かある(笑)、訳があるでしょ。店に行って聞けばいいのですが、それもナンだから、あれこれ調べると‥

50年以上前に、当時のチーフパティシエが独立して新たに構えたのが多摩丘陵の洋菓子店なんですと。なんと半世紀以上!姿かたちを変えることなく、二つの店で同じバタークリームの生ケーキが作られ続けてきたんですね‥。

名物にうまいものなし、とまで言われてしまう旧いモノたち‥。でも、変わらぬように見えて、実はたゆまぬ進化をしている名物もあるはず。逆にニンゲンの方こそ、時が過ぎてもさほど変わっていないのではないか、なんてね(古典の先人達を思えば、変わらないどころか‥)。長く作り続けられているものには理由があり、どこか人の心(と舌)を温かく、ほっとさせてくれるものです。新しいヒトには新鮮に、ちょっと旧いヒトにはノスタルジックに‥。

美食や新味、斬新さを求める高級洋菓子は、リフォームに例えると(無理あるケド‥)デザイナーや気鋭建築家のリノベーションでしょうか。だとすれば、心と舌(と財布)に優しく、ちょっと懐かしい洋菓子は、無垢材や汎用品を用いてつくる素朴なリフォームに似ているかもしれません。

とすれば当然ウチは、高級菓子でなく懐かし系の洋菓子、いや駄菓子か‥。そう、放課後の駄菓子屋のほうがぴったりだ。いまだに駄菓子みつけて喜んでいるし(笑)

Mさんもそんな感じでご一緒いただいていたのかもしれません。住宅は人の手で造るモノであって、工業製品じゃないから、とか。そうですね、だいたいそんな感じで結構です、とか(笑)。それでいて、ご自身の好みが存分に反映された素敵な住まいになりましたから。

だとすると、先の洋菓子店のいただき物がよい塩梅に思えてきます。更には、50年をも遡る同じルーツを持つふたつの洋菓子店、それに加えてMさんとのご縁にも不思議なつながりを感じたわけです。

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