設計者の想いと現実

さてここで問題です。

Q.この建物は、各住戸の居住性を向上させるために、設計上のある工夫がされています。どのような工夫でしょうか?

A.両面バルコニーを実現するために2戸1階段型としています。高層階に必須のエレベーター(EV)は、工事費等と今後の維持費を考慮して1基のみ。そのため、EVを4,7,9の特定階のみ停止させるスキップフロア方式を採用しています。EV停止階では北側バルコニーが廃止され、替わりに住棟内を往来する開放廊下になります。この廊下経由で各階段室から住戸にアクセスします。(分かりにくくてスミマセン‥)

スキップフロアを聞いたことありますか。あるのでしたら、随分とマンション探しを深堀りしていますね。ちょっと古い、いい感じのマンションを見ているのでしょうか。

要するに、経済性と居住性の両立を目指したのがスキップフロア方式。結果として次の①、②の二種類の住戸ができました。(他に角住戸がありますが割愛します)

①EV非停止階:〇両面バルコニー。✕階段の上り下りが必須。

②EV停止階:〇EVまで平面移動で便利。✕北側居室は型ガラス+面格子。窓前の開放廊下を(上下階も含めた)居住者が往来。

このスキップフロア方式は、居住性の優れた①を生み出すための計画です。居住性を向上させるためには階段利用でもしょうがない、と。逆に居住性に劣る②が出来るのが止むを得ない。設計者たちはそう考えていたのでしょう。(私もそう思います)

だが、しかーし‥。世の反応は、設計者の意図とは違っているようです。「階段の上り下りなんて不便。EV停止階がいいわ!(両面バルコニーよりEV近いが大事)」という声の多いこと。折角、両面バルコニーを実現するために頑張ってきたのに、トホホ‥。

中古マンションの広告でも「便利なEV停止階!」という謳い文句をよく見かけます。もちろん、広告は良いところにスポットを当てるのが常道ではありますけど。では「不便な両面バルコニー!」という自虐的で確信的な広告はどうでしょう。受けないな‥

そんなことが影響しているのか、’80年代後半に見られたスキップフロアは絶滅危惧種です。新たにはつくられてないんじゃないかな。

①に賛成の僕はやはり少数派なのでしょうか。明るくて快適でいいと思うんだけどなー、「両面バルコニー」って。

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