再び・中庭

今秋に手掛けた当社物件の中庭。中庭の向こう側も敷地内の建物。

ところで中庭(courtyard)です。すこし前に、住戸に付属する小さな中庭について触れました。でも一般的には、マンションの中庭と言えば、敷地内にある複数の住棟に囲まれた空地を指すのでしょう。低層はもちろん、中高層マンションにも見られます。その名称の通り中庭らしいか否かは別として‥。

最近の新築分譲マンションで、ちょっと面白い物件を見掛けました。四角い敷地に、湾曲した建物(数棟)が(上から見ると)楕円を描くように配置されており、建物に囲まれた敷地中央には楕円型の中庭があるのです。日本の分譲マンションではあまり見掛けない形状です。

この物件は湾岸エリアに位置し、周りにはタワーマンションが林立しています。タワーの場合は敷地外周部を公開空地とすることで高い容積率を(役所から)得る代わりに、街の景観にも寄与します。反対にこの中高層建物は、内に向かって閉じて居住者専用の中庭をつくりました。言ってみれば基本的には普通のマンション。躯体を湾曲させて、空地全体に樹々や水盤を設えたコトだけが新味、と言っては身も蓋もないですが。そして庭に面した(居住者専用の)カフェやライブラリーを共用部分に仕込んでいます。

容積は稼げるがコストが高いタワー、その反対である通常の板型マンション。という条件下でのソロバンなのか、それとも別の理由があるのかは分かりません。それでも、個性的なラウンド型建物と豊かな中庭によって、特別感が演出されているのはお見事です。

中庭の一角でPC開いてリモートデスクワーク。住民専用カフェで居住者同士のティータイム‥。子供の誕生会は、外のお友達呼んでパーティールームで。ライブラリーには本屋がセレクトした人気ジャンルの本が並ぶんだとか。

いいですね、自宅には持ちえない施設ばかりです。使いこなせたら暮らしの幅も広がるでしょう。でも、果していつまでこのクローズドな共用施設で居心地の良さは続いてくれるのでしょう。

こんな話を聞いたことがあります。Community、コミュニティのどちらも言葉も、頭文字(C/コ)が三方を閉じながらも一ヶ所が開いている文字であると。閉じていて安心できる場所でありながら、外にも開いている。つまり、コミュニティには風通しが大事だというコトです。同感‥。

このマンションと似た施設が集まる都市ホテルが快適なのは、そこが街に開かれているから。不特定多数の人々がざわめきの中を行き交い、個人の匿名性が担保されているから。僕はずっとそう思っていたクチなので‥。

いずれにしても、我らが郊外の中古マンションでは望むべくもない施設ではあります。

また、そんなものがなくても、部屋の中に光と風の抜ける居心地の良い場所をつくり、空と緑を建物の外に求める暮らし方があればいい。

そして、ふらり街の雑踏に身を置いて、カフェ(酒場?)にでも腰を落ち着けるとしましょうか。

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