無印良心

俺って江戸っ子だからさぁ、「ヒ」と「シ」の区別ができねぇんだよ。と、嬉しそうに言うヤツがいた。お前どんだけ江戸っ子なんだよ、「シガシ」とか「アサッシンブン」とか言ってるの聞いたことないけど。でもたしかにオマエ、「真っつぐ」とか言うよな‥。なんていうのは昔むかし、中学生の頃のハナシ。

でも確かに僕も「布団を敷く」は「布団をひく」と言ってみたりして(これはエドッコと関係ないだろうが)、「ヒ」と「シ」ってちょっと曖昧で、ムズカシイデスネ。‥ということはナニかい、江戸の頃は「無印良品」は「無印リョウン」って言うんかい?

ということで、「無印良心」の話。

パナソニックやリクシルの住宅建材や設備機器はとてもよくできている。そして工事がスムーズに行われるようにあらかじめ工夫や配慮がされている。誰でもできる、ということはもちろんないが、感覚で言うと部材を嵌める、組み立てる的な要素がある。そしてそれらには僕も大変助かっている。

一方、ウチでも使う無垢材床や、素の状態で納品され、現場で加工や塗装をする壁や建具などは、既製品と違ってひとつずつの手作業だ。どちらがいい、ということではなく、それぞれに長所短所があり、適材適所であるということ。

でも、大工さんが工夫をしながら貼ってくれた床、何度も拭き取りながら塗装してくれた建具の味なんかは、いいなぁと思う。その手仕事は、「パナ‥製システムキッチン、‥ソニック製建具を採用!」と謳う「リノベーション」物件の広告と違って、「どこそこの誰々大工手づくりの‥」なんてタグはつかない。それにその広告の「リノベーション内容」などという概要欄でも、設備仕様は細かく記載されるが、間取りの変更やその工夫が触れられることは少ない。(キッチンや洗面台などを造作した場合は、分かりやすいのでその旨記載されるが)

でも一番伝えたいものは、工場でつくられた各設備機器ではなくて、手づくりの跡が残る仕事の箇所・内容であり、もう一つは、名前が残るわけではないけれど、自分の仕事としてやり直しも厭わず事に当たってくれる職人さんたちの姿勢、すなわち良心であるのだ。

これ即ち、ムジルシリョウン(無印良心)という。おしまい。

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