
50年前から長く読み継がれている絵本です。
かおるという男の子が夢想したこと。《庭に木を植え、大きく育てる。目的は、はしごで登る木の上に、キッチンとベッドのある小屋を建てること。鳥やリスにも住まいをあたえてさ‥》
その小屋のなかで四季が廻る。そんな空想を聞き、おとうさんも子どもの頃にそんな木が欲しかったんだと語る。そして二人は庭に木を植える。‥そんなお話です。
葉が茂る樹上の小屋の窓外に、移りゆく四季の風景が美しく描かれています。この絵本に描かれていること、ああそうか、これなんだ。僕のなかにぼんやりとあるものは。
絵にあるキッチンも、簡素だけれど好ましい。かおるが作れるのはホットケーキだけのようだし。必要にして充分かな、大きなシンクとプロパンのガス台があれば。何よりキッチンの窓から見える景色があれば‥。
かおるくんのおとうさん、子どもの頃に欲しかった大きな木、まだ遅くないですよ。木を植えて、小屋をつくろうよ。
以前に書いた「辛口の現実を知ると、大人はもう一度夢を見る」ではありませんが、子どもの夢想と大人の枯れた遊び心は、案外気が合うものかもしれません。ちなみに、ツリーハウスを本当につくってしまうカッコイイ大人もいるでしょうが、ここでのハナシはそんなの大それたモノではなくて‥。
豪華でなくても、そんなに広くなくても、窓から樹々が見えなくても(これは見えた方がいいなぁ‥)、木の上に登っているような気持になれる住まいがあるといい。人によってその小屋の形はそれぞれだけれど、そんな小屋に出会える方が一人でも増えるといいなと思うのです。


