オルタナティブ?

稲垣えみ子さん、という元朝日新聞記者(今フリー)をご存知でしょうか。彼女は在職時代(の東日本大震災の頃)から、電力を極力使わない生活を試みておられ、10A(?当時は20Aだったか?)生活の様子など綴った記事を楽しく読んだ記憶があります。

最近久しぶりに目にしたコラムによると、その生活スタイルは更に研ぎ澄まされたものになっていて‥。冷蔵庫なし、ガス契約なし、風呂は銭湯。毎日使い切る分だけの食材を買い、余れば天日干し、ぬか漬けに。えっ、火がないの?と思ったら一口カセットコンロがありました‥。昔はみんなこうだった、さらりと彼女は言います。

ちなみにこれは苦行ではなく、全くもって喜びに満ち溢れているのだと。そこで得られたものは、(いくら欲しても足りない)モノの呪縛から放たれた自由や、自分の中に眠っている(どうやってでも生きていけると思える)チカラ、それから‥(忘れた)。(たしかそんな感じのことが書いてあった気がする)

稲垣さんを思い出したのは、30Aという団地の電気容量について考えていたから。大きく育った樹々の間にゆったりと5階建てが並ぶ団地(で昭和40年代半ば頃までに建てられた物)では、構造的に容量上限が30Aの場合が多いのです。

時は流れ、今は生活の殆ど全てを電気で賄う時代。調理、冷暖房から照明まで電化製品の高機能化(要不要は別のハナシ)は止まりません。また一方では、新興メーカーBALMUDAのように洗練されたデザインと力強い単機能を持つ家電も隆盛です。リノベしたお宅を紹介する写真の背景にはかなりの頻度で登場しますね、ザ・レンジとか。先日、二子玉川の蔦屋家電を通過(‥)してきましたが、それらが素敵に陳列されていましたし‥。

そんな電気一辺倒の状況のなか、団地でどっこい生きているのが「ガスとガス栓」。キッチンだけでなく、複数の居室にガス栓が設置されています。先の電気容量で快適に暮らすために、ガスも上手に併用したいところ。というか団地でなくてもガス、いいじゃないですか。

上の写真はガスファンヒーターです。高さ35センチとコンパクトですが、寒い朝の外気温なんて関係なし、一瞬で”芯のある”熱風を吹き出してくれる心強い味方。石油ヒーターのようにポリタンクでの燃料搬入も必要もありませんから、使い勝手は良好です。

キッチンにはガスオーブン。ガスコンロの下にコンビネーションレンジ、つまり電子レンジ+ガスオーブンですね。ビルトインで省スペースにもなりますし、なにより電気オーブンと比べても、これまた”芯のある”強い火力。小技を使わずガンガンいきましょう。

ガスコンロ下部の(魚焼き)グリルも、最近は焼き魚以外の料理に多用されます。たとえば以前に武骨な道具として載せたガスコンロ(なお写真のコンロ下部はコンビネーションレンジ)には鋳鉄の鍋が付属し、ダッチオーブン的な使い方が提案されています。

ついでにご飯もガスでどうぞ。最近は、火加減の調節が不要で扱いやすい土鍋も見掛けます。15分も火にかけておけば出来上がり、とは思ったより簡単ではないですか。もうあれもこれも‥、家電の代わりにガスが大活躍(出来るかな‥)。

土鍋でふっくらご飯を炊く、お焦げもいいな。そんな心の余裕を持てる日は、ここまできたらもっと原始的にいこー。これは日常というよりはお楽しみの部分ですが、もうひとつの熱源として炭は如何でしょう。でも集合住宅内だから、小さな七厘で。例えば、味噌や麹に漬け込んだ魚の切身を小さく切って、ひとつずつ炙って‥、キューッ(何の音?)と。(やっぱり手間だから、ガス台で炙りますか‥)

随分とまぁ、無責任な放言続きではあります。実は、ダッチオーブン以外はボクも実際にやっていて、効果や楽しさを実感しているもの。だから、団地の容量30Aと聞いても、何とかなるんじゃないかなぁなんて思ったりして。

忙しない日常はついて回るけれど、そこから切り離された時間と空間を持っていたい(持っていないとツライなー)。それは(あまり)お金の多寡とは比例しない、心持ちひとつでできる贅沢な時間。そんなときに、電気だけでない、もう一つの選択肢であるガス(や炭火‥?)が心を落ち着けてくれるかも知れません。

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