PSU2021

今年も「光と風の抜ける暮らし」。

コンラン卿の素敵な伝言、「PLAIN SIMPLE USEFUL」に倣いたいものです。

無理せず、気負わず、自然体で。良いと思えるコトやモノに関わることができたら嬉しいです。

仕事納めの夜は更けて

事務所に届いたのはクリスマスプレゼントか。いや、違う。来年のカレンダーと手帳だ。送り主は僕の古巣である不動産会社の常務役員。ウチの会社10周年を機に世田谷へ事務所移転した2年前にも、真っ先に駆け付けてくれた先輩でもあります。若い頃‥

先輩:「池田が俺より偉くなったら、俺はちゃんと”池田さん!”って呼ぶからな。(オレはその辺の区別はキチンとしている‥という意味)」

おいら:「当たり前でしょ、練習しておいてくださいよ。」

先輩:「わかりました、池田部長!」

なんて、お互いに切磋琢磨?した先輩も、今や経営の舵を取る立場(え、そうでもないの?)。※ボクの古巣はその当時、(製造業などtraditionalな企業と違って)年長者が後輩に「敬語」で接する文化は(ほぼ)なかったので、先輩が後輩にいきなり「さん付け」するのは覚悟がいることだったのです、多分‥。ハハハ、今は昔ですね。

そんな敬愛する御仁から有難く来年のモノをいただくと、気分はすっかり仕事納め。サラリーマン時代は、大体29日が最終日だったなあ‥(遠い目‥)。

ふと思い出したのは、ある年末最終日のこと。その前日に酔って足を滑らせ、盛大に顔を擦りむいたと言うより剥けた(ことに翌朝気付いた)僕は、(何をする時間もなく)小さな絆創膏数枚を持って、新幹線の中の人となりました。取引予定企業との初顔合わせなのですが、お相手はさぞビックリしたことでしょう。あちこちの生々しい傷が絆創膏からはみ出しているのですから‥。そんな(相手にとってもボクにとっても)トホホな役目を終えて奥州の地から帰社したのは、終業時刻を随分すぎてからのこと。既にボクのデスク以外はキレイに片付いて(年末だけデスク上の山が消えるのです‥)、ビールと乾きものと(こちらを向いて)笑い声が‥。

今の僕には仕事納めの線引きも不明瞭で、気がつけばもう年末という感じ。そんな折、送られてきたカレンダーに、旧き良き風景と情けない自分、そんなものを懐かしく思い出しました。へへへ‥

N邸

素敵な空間をパチリと一枚。この夏から秋にかけて、物件取得からリフォームまでご一緒した住戸の工事完了前写真です。僕はただの不動産業者であって、もちろん建築家ではありません。よって、サポートした住戸を「ウチの作品」と称して写真を掲載することはないのですが、とてもいい感じなのでちょっと一枚載せてしまいます。

南側間口の17mに亘ってルーフテラスが大きく広がる稀有なプランを生かした、居ながらのリゾートです。広い空の遠くには丹沢の山々を望み、朝から夕方まで陽射しに満たされる室内は、この季節でさえまるで常夏。大きく変更した基本プラン策定に関してのみ、発想力豊かな設計者の力を借りました。それ以外は、現場とお客様と共に進めるわけです。あまり聞かない、ちょっとラフなやり方かもしれませんが、ウチでは別に普通のことで‥。これが今回、早いのなんの。

依頼主Nさん、以前僕が書いたコラムマンション選びは汗かいてで紹介したボクの物件選び同様に、ご自身達だけで(これまた暑い中で‥汗かきながら)現地を確認、その上で後日ご一緒して内覧に至りました。フルリフォーム前提なので内装は気にしないのですが、その他立地条件などは挙げればきりがないところ。この物件には、駅距離、階段アクセスなどスペックだけで言えばマイナスであろう箇所も散見されました。でも、それは何とかするとして‥。絶対他にはないと言える長所にフォーカスすることで、キラリと光る住戸を手にしたのでした。

こういう軸を持って素早い判断をされる方は、良いタイミングで光る住戸を取得されることが多い気がします。たくさんの方を見てきた、個人的感想ですが‥。

「N」と言えば、話は飛びますが、N高をご存知でしょうか。学校とは何だ、学びとは何ぞや?と、これまでの教育の価値観を揺さぶっている学校法人が運営しています。通信制を標榜しながら、従来の生徒像とは異なる異才や異端児までを惹きつけ、1期生から早くも東大合格者を輩出するも、偏差値は絶対の軸ではない。進学もスポーツも、起業も就職も修行も横一線の価値であるとして、生徒それぞれが自分の道を模索しています。

教育界全体から見れば、まだその影響力は小さいけれど、もしかしたらこれは何かの胎動なのかもしれません。何ごとも最初は過小評価されるもの‥。このN高以外にも見渡せば、あちらこちらに芽吹きを感じるこの頃。決まったレールがあった(ように見えた)ボクらの世代には隔世の感です。

‥‥。全然関係のないハナシでしたが、この「N邸」も「N高」よろしく、住まいとはうんぬん、資産性が云々(ウンヌン)で、こうでなくてはならない、という窮屈さとは無縁。自由な光と風の抜ける気持ちの良い場所となっています。Nさん、今回の決め方から暮らし方までカッコ良すぎですよ!

男達の晩夏、それとも晩秋

成城大学に向かう銀杏並木

こんな時期に、(マスクをしてまで)会おうぜ!と言ってくれる旧友がいて(嬉しいことか、それとも困ったことなのか‥)。この秋、こんなご時世だからとわざわざ都心を離れた場所で会ったというのに、酔ったひとりがゴールデン街に行ってみ・た・い(君は観光客か‥)、と言い出して‥。何もこんな時に、と思いながら閑散とした路地に足を踏み入れると、やはり外国人観光者が来ない影響も大きい、と店主。僅かばかりの売り上げ貢献をして、早めに街を出たのは言うまでもないけれど‥。

よく言われることだが、この年齢になってくると同窓会が増えるようだ。先の旧友も、高校時代の同好会メンバーで連絡が付かないひとりを探していた。「(就職時に)〇〇銀行に行ったんだけど、知りあいの同期で誰か(消息を)知らないか?」 あの頃のようにまた一緒に山登りしたいのだ、と言う。なるほど、まさに働き盛りの時代を過ぎつつある、男の晩夏、いや晩秋を感じる一瞬だ。

それなりの組織で、それなりの役目を演じながら、最終コーナーを廻った男、まだ階段を上っている男、(僕のように完全に降りているオトコ‥)。人によっては、子供と二人三脚で走ってきた季節が過ぎてぽっかりと穴が開いたり、昔むかしに心ときめいた誰かと再会したりもするのだろう‥。

そういえば、大学の同窓会で幹事を頑張っていたヤツは、今まで仕事一筋だったが、これからの人生の交友関係をここでつくりたい!(とキッパリ)と言っていたな。(オレはいいや‥)

ボクの周りには、それなりの年齢になってから企業を離れ、自分の道を歩んでいる人達が(少し)いる。企業人時代の専門を活かした開業が多いのだが、ちょっと素敵なのが、探偵や指圧師になった先輩たち。企業で成果を上げていたから、しっかりと太い「はず」の軌道を自ら脱線し、(なんの保証もなしに)いい歳して一から学び直したのちに事務所や店舗を開いている。もちろん、それを仕事にしたいワケについては、僕も聞いてよく理解できるのだけど‥。そこにポンッと飛び出す跳躍力は、まるでカエル並みじゃないか。

僕も組織から外れたので、その意味では季節感がない。狭義では人事異動の季節も関係ないし、広い意味では出向転籍や定年もないので晩夏も晩秋もない。ここは常夏か?それとも厳冬の地か? えっ、それとも黄昏時なのか!?

黄昏時‥。毎日の暮らしの中では、ほっと一息つく時間。毎日の黄昏時は歓迎。マジックアワーにブルーアワー、手を休めて空を眺めよう。

冬至を前にして、すでに夕方の日は長くなり始めていることをご存知でしょうか。逆に、朝はまだまだ遅くなり、反転するのは1月中旬だということも。冬に突入したといいながらも、少しずつ早くなる夕暮れ時に、春の芽を見つけようというのは、さすがに気が早すぎますかね。

集まって住むこと

上の写真は、集合住宅の一種であるタウンハウスの敷地内。手前に写るタイル部分は玄関ポーチ、以前に当社がリフォーム済販売した住戸です。奥に写るレンガ色の構造物は、下部が屋内駐車場、屋上は水の流れる広場になっています(素敵ですねー)。

タウンハウスは、日本語でいうと「(現代風)長屋」と呼ぶのでしょうか。低層2階建て程度の住戸が界壁を共用して横に並んで建つ形式です。八っつぁん、熊さんの住まいが現代的になった(だけ)という印象なのか、タウンハウス(連棟式とも呼ぶ)は「長屋でしょ」と言われ、マンションの方が「近代的でおしゃれである(ホント?)」という評価が(以前の不動産業界には)あった気がします。最近は知りませんが‥。

英国でも米国でも、古い街の風景にはタウンハウス。確かに上に伸ばすタイプの住居ではないから、高層建築が可能になっていく中で存在感が低下したのでしょう。それでも彼の地の重厚なタウンハウスは、有名人がリノベートして暮らしていたりするようです。カッコイイじゃないか!

タウンハウスは大きな土地に絵を描いていきますからプランニング上、結構自由度があって、ランドスケープも住戸プランも変化に富んだものが出来るはずです。が、日本ではどうにも地価が高いうえに、タウンハウスの評価が高くないのであまりつくられません。ブツブツと小分けに土地を区切って、敷地内に道路で繋いで戸建群をつくる方が、より高く売りやすい。狭い庭でも自分のものは自分のモノ、ということです。

ところで写真のタウンハウス、僕が販売した際の説明資料にこんな文章を書いています‥。「駅へ続く道から敷地に足を踏み入れると、風景が一変します。大きく育った樹々と、縫うように続く小径や広場がつくる佇まい。総戸数40戸、1住戸あたりの土地持分が約75坪の広大な敷地です‥(続く)」

なんと1住戸あたり75坪!つまり、この住戸の専有面積117㎡(約35坪)に対して2倍以上。この持分を全住戸分まとめた広大な土地、そこに描かれたランドスケープは豊かです。多くの樹々も共用部分。だからこそ個々人の負担は比較的少なく、その中に身を置き景観を楽しむことができる。

このタウンハウスの前オーナーは、晩秋の落ち葉に埋もれた風景が一番好きだ、と言っていました。居ながらにしてそんな気分になれる、ちょっと特別なタウンハウス。前述の通り数は少ないですが、見つけることが出来たら集合住宅の、ひいてはマンションの見方や選び方も少し変わるかもしれません。

良い旅を、と誰かが言った

普段はちまちまと一本ずつ買っているデイリーワイン。デイリー‥などとわざわざ書くと「ワイン好き」の普段飲み用、高級でないけれど結構いいやつ、に聞こえるかも知れません。でもそれとは大違い。僕が手に取るのは、ちょっとした酒販店だと陳列棚にその価格帯の該当商品なし!となってしまう代物。それが我が家のデイリーワインだ!トホホ‥。

一般的には、僕が買う超手頃な価格帯だと、南米チリ産あたりが無難だと思う(これは個人の感想です)。つまりCabernet Sauvinion(カベルネソーヴィニヨン)が中心でしょうか。余談の昔話ですが、知人である帰国子女が、当時ひとりだけキャベネ!って言うんですよ、おいらみたいにカベルネと言わないの。なんか嫌味なヤツだなぁなんて思って‥(笑)。「姓はCabernet、名はSauvinion、(日本の)人呼んでカベルネソービニヨンと発します。(寅次郎風に)」(これが日本人だ)。

ということで、僕の財布にとっては、チリあたりのワインが安くてウマくて良いと思うわけですが、(たいして味もわからない上に)「舌(味)よりも心(イメージ)」で飲む僕としては、ついつい特定のコーナーに目が行ってしまうのです。おっ、見つけた。ガルナッチャ、ボバル、プリミティーボ、ネロダァーボラ‥。繰り返しますが、味ではなくイメージです。(名前違って、同じ品種だったりして‥よくあるハナシ)

つまり、食卓の上で旅をする。アーム(のついていないウチのダイニング)チェアトラベルということ。どこでも買える安価な食材で旅をするためには、ワインに旅をしてもらわないとね。行きやすいので、よく行くところはスペインやイタリア南部。大量のニンニクやトウガラシ、オリーブオイルを駆って、彼の地へひとっ飛びです。

そういえば、イタリア在住(ローマか?)ウン十年の塩野七生さんも、ワインには物語があって心で味わうもの、と言っていたっけ‥。あの人が旅するところは何処だろう、いや何時だろうか?ルネッサンスかそれとも古代ローマか? ハハハ、ラベル(とレベル)が違いますわね‥。

さて、そんな旅する僕ですが、(表面上の!)値引き率に魅かれて、世界各地のワイン詰め合わせを箱買いすることもあります。フランス、ドイツ、チリにアルゼンチン、もちろんアメリカ、オーストラリア‥。世界中を忙しく飛び回っております。いやー、プロが選ぶのは(値段なりに)おいしいな。

今日もどこからか「良い旅を」という声が聞こえてきた。おっ、「Bon voyage!」‥

でもやはり、私は慣れた土地の言葉でいきますか‥。みなさんも「Buon viaggio!( ブォンヴィアッジォ!)」 

the smallest IKEA

ある日、ニホンのIKEA店内

イケアの故郷スウェーデンには、’80~’90年代のイケアで販売されていた商品が並ぶ、イケア最小の店舗(IKEA談)があるそうです。この店舗は期間限定の中古品専門店で、価格は新品の半額以下。障害などで民間企業で働くことが難しい人たちが、所属する国営企業から派遣されて、クリーニングや修理を担当しているとのこと。

この最小店舗が位置するのは、一般の商業店舗内ではなく、公共リサイクル施設に隣接するリサイクル専門モール内。この専門モールは5年で倍増し、現在スウェーデン国内に14店舗あります。循環型の経済を国の戦略としているスウェーデンにおいて、このリサイクルモールは成功例のひとつに挙げられており、イケアはこのリサイクルモデルを学ぶために出店したのだそうです。(ここまでNHKの情報を参考にしました)

元々新品でも手頃なイケア。なんとなく使いきりのイメージを持ってしまいがちですが、そういう時代ではなくなり…考えを改めなければなりませんね。たしかに、廃盤になった家具が大切に使われているのを見たことがあります。奇をてらわないスタンダードな家具たちはそれなりにタフで、肩ひじ張らずに暮らすラフなスタイルに相応しい相棒です。

また、サステインナブルな道具として見立てるならば、もっと古い、いわゆるアンティーク家具と肩を並べて使うのも、良いのではないでしょうか。

思い起こすと、以前に「順光のリビング」という頁で掲載した住戸内写真は、イケアのアームチェアとアンティーク家具(高級品ではありません‥)を合わせて置いたもの。今までのアンティークとはまた違う目線で、つまり安価だけれどもサステインナブルでデザインにも優れたスタンダード商品として、リユースされる時代が来るの「かも」知れません。なんて‥

でも、結構いいですね、イケア。例えばこの(「順光のリビング」内の)白いアームチェアはデザインも普遍的。価格は手頃で、カバーの種類も豊富です。あとは鉢植えの大きなグリーンでも茂らせれば、小さな居心地の良い空間になりますね。

そういえば、日本発のメルカリも、リユースという意味では同じでしょうか。もっと言うと、以前に触れた「カリモク60(ロクマル)」を扱うD&DEPARTMENTなどは、ずっと前からグッドデザインのロングライフ商品を、クオリティを保って販売することを続けています。見渡せば、いろいろ‥。スウェーデンだけではありませんね!

実は僕、メルカリに登録しています。35年ほど前のクルマ、ホンダCITYカブリオレの(車体はもう手元にないのに)新品幌(超レアのはず)をまだ保有しており、どうしたものかと‥。メルカリに出品して、どなたかに買っていただこうと思って登録したわけです。でも、配送の段取りや何やらで(上手くやらないと、低い)段階評価をされるというので、ドキドキして出品が出来ず今に至るという有様です。逆に、思いもよらないものを発見したりして、楽しく利用してはいるのですけどね‥。

石の壁にも三年

以前に販売した物件の写真を見ていたら、これが。

ただのキッチン‥。

たしかにシステムキッチン自体はシンプルの極み、四角くて白い箱。設備機器についても、火が出る、水が出る、空気を吸う(換気扇のこと)、それだけ。食器洗浄機、浄水器、ビルトインオーブンも、なーんにもありません。

なのにキッチンの壁だけ、えらくゴツイですなぁ‥。

そうです‥。実はこれ、天然石を貼っているのです。大きめ独立型キッチン(w2,700㎜だったか)の壁なので、かなりのボリューム感と重量です。

工事の手間も随分掛かりました。あまりの大変さに、現場に居合わせたメンバーが見て見ぬふり出来ず、他の職人さんから設計者まで皆が総出で手伝って仕上げたという、いわくつきの石貼りキッチン。ちなみに僕は当時、幸いなことに(?)現場に居りませんで‥(ごめんなさい)。

「すんごいタイヘンだったのよぉ~、もう二度とやらないわ(キッパリ)」という訳で、わが社(のコスト)では幻の仕様となりました、とほほ。(リフォーム済販売住戸ですから、やり過ぎはいけませんね)

ちなみにこの住戸、壁は漆喰の左官仕上げ、木製の扉は現場で塗装、とキッチンだけに留まらない手づくり感満載のリフォーム済中古マンション。若カッタネ‥

そんな風に手を掛けた住戸も、販売してから随分と時間が経ちました。ガスコンロ前の油はねも、いい味わいになっていることでしょう。同じくキッチンの経年変化を楽しむ素材としては、レンガタイルもいいですね。以前見掛けた(デザイン関係の方がリノベートした)キッチンでは、木製天板と煉瓦壁のラフで古色蒼然とした雰囲気が、もはやマンションというより山小屋の域に達していました。汚れが染み込むのがいいのだ、とのことでしたが同感です。

実は、会社設立時の事務所(代々木公園)の壁も、セルフで塗ったホタテ漆喰でした。10年経っても白さはずっと変わらず、ホコリも付きにくく(静電気が発生しないのだと)、オマケに心なしか空気も良い(たばこ吸いませんけど)。

もっと言うと、同じくこの事務所への入居時、床には(例の)奥多摩産杉無垢材フローリングも敷きました。古色の天然塗料である久米蔵を塗布した、濃茶の床です。土足で過ごしましたが、退去後も貼替不要、きれいに洗って再利用されています。

自然素材を使った我が旧事務所は、壁・床ともに10年後の塗替え・貼替え無しのまま、次のテナントにバトンタッチができた様子。なんかいい感じですね、ザラっとした自然素材。ちなみに今の事務所はツルツルです‥。

自由帳だから

ARMSTRONG by Torben Kohlmann

新聞に載っていた投書をひとつ‥。

子どもが「今流行りのアニメの主人公が上手く書けたよ」と、学校に持っていっている自由帳を見せてくれた。どれどれ、その前のページは‥、と開いてみるが白紙。その前のページも白紙だった‥。不思議に思って聞いてみると息子は、「パッと開いたページに何も描いていなければ、そこに絵を描くんだ」との答え。なぜ?と問うと、「自由帳だから」。

そうか、自由帳か! と、投書をした親御さんは膝を打ったわけで‥。

確かに常識というか思い込みにとらわれて、そんな伸び伸びとした発想がなくなっている自分にも気づく。たしかに、ノートの端から順序良く、お行儀よく描き込んでいったボクのアイディア帳には、窮屈なアイディア(とさえ呼べない‥)が並んだまま、お蔵入りしているものもあるし‥。

仕事にも、思い込んで変わらないことがあるのかも知れない。不動産流通やリフォーム工事に係る業務にも定型がある。業務に関わる皆が、定型をトレースするように、暗黙裡に淡々と仕事が進んでいくのだ。こうするのが当たり前だと言わんばかりに。

仕事を円滑に進めるための定型①と、定型があることで発想まで固まってしまった故の定型②。きっとその両方があるのだろう。無駄なく漏れなくスムーズに進めるために確立されてきた定型①は良い。けれど、もう考えなくてもスイスイ進むからと、発想の発露なき定型仕事②に慣れてしまうとちょっとツマラナイ感じ(もちろん業務内容によっては、その限りでないだろうが‥)。

たしかに、規模の大きい会社は多くの社員が働いているのだから、定型を定めてクオリティを一定に保つ必要がある。このことはウチでお会いするお客様もたびたび指摘すること。組織の安心感を背景とした良い面と、それと表裏一体の少し物足りない面が共存しているのだろう。

話しは少し変わるが、僕が関わる不動産流通と建築(リフォーム含)の二つの業界は、とても近いところに存在するように見えて、その間には深い(かどうかは分からんが)溝がある。どちらも専門性の(比較的)高い業務であり、属人ベース(もしくは会社ごと)ではどちらか一方の業務に特化している故に、交わりそうで交わらない。だから顧客は、不動産部屋で用事を足して、それから建築部屋の扉を開けることになるのだ(扉なんぞ無い、風の抜ける会社もモチロンあるが)。

そんな中で例えば、不動産と建築を繋いだり、家具製作からリフォームに展開したり‥。そんな風に様々な個性が、日々小さな越境をして活動しているのを見掛ける。(建築界隈の中だけのハナシだから)大移動ではないけれど、それでもそんな小さな越境が、ちょっと面白い目線を与えてくれたりする。

不動産はこう、リフォームはこう、と杓子定規に考えないで、いろいろな活動を(している人がいることを)知ってみると面白いかもしれない、と思う。なんて‥。

もっともそんなことを言う僕自身は、自由帳の扱い方さえ覚束ないのではありますが‥。

PLAIN SIMPLE USEFUL

TERENCE CONRAN、つまりテレンス・コンラン。彼が開いた「コンランショップ」は何屋さんと呼ぶのでしょう、インテリア?雑貨? いやライフスタイルに想いを巡らせる店、というのかな。このコンランショップ、日本では20年以上前から新宿パークタワーという超高層ビルの低層階に店舗を構えていました。

このパークタワー最上層部にはパークハイアット(当時ハイアットの最上級)ホテルが入居していて、地上階の小さな独立エントランスから一気にEVで上がると、パっと眺望が開けるという仕掛け。それまでのホテルと言えば、敷地建物丸ごとホテルが主流だった時代、現在に続くビルイン高級ホテルの(日本での)先駆けだったのだと思います。もちろん僕は(山縣有朋が造らせた庭園だという意味では好みではないが)、豊かな敷地をもつフォーシーズンズ椿山荘の方が好みだったのだけれど‥(ボサボサの多摩丘陵とはだいぶ違うかな‥)。

そのコンラン卿(きょう)がこの秋に亡くなっていたことを最近知りました。新宿のコンランショップには随分立ち寄ったし(このビルは、各社ショウルームや建築インテリア系蔵書も豊富だったのです)、コンラン著書は何冊も所有(だけ)しています。

そして後で知ったこと。僕が高校の帰りに寄り道していた西武百貨店、その西武のハビタ館は、コンランが創業したハビタ(というショップ)との提携によって生まれたものだったのです。セゾン(西武鉄道に対してこう呼ぶ)が発するカルチャーがムンムンしていた時代、それを横目に育った僕は、後年自身が起こした会社に「スタジオカーサ」と名付けました。実はこの名称は、西武百貨店池袋内に当時存在した設計スタジオなのです(今はもうありません。さらに、あっちは設計、こっちは不動産業‥)。

(我が)スタジオカーサの語源は当時のセゾンにあり、その当時のセゾンにはコンラン創業のハビタが同居していたという偶然。そんな僕がコンラン、特に書籍にたくさんのインスピレーションをもらってここまで商売を続けてきたわけです。うすーいご縁だけれど、30年を軽く超えるながーいご縁を感じずにはいられません。

ハナシはまたしてもおおーきく逸れました。表題の「PLAIN SIMPLE USEFUL」もコンラン著書名。まさにこの3つのワードは、コンランと言えば僕が思い浮かべるワードであり、僕がそうありたいとも思う姿勢。この書籍「PLAIN SIMPLE USEFUL」は電子ブックにして持ち運べるようにしています。上の写真の通り、この人の本は重くて大きいので、ちょっと眺めようにも「よっこらしょ」ですから。

ちなみに、これも後で気づいて苦笑したことだけど、同じくセゾンのファミリーレストランの名称は「CASA」(こういう企業系列を知るのが好きだったので、こんなこと覚えていたのですヨ‥)。

結局、セゾンカルチャーが何か、本当のところは触れずに通り抜けてきてしまったけれど(僕はまだ若かったのだ)、僕にとっては空気のようなものだったのだろうと思います。

蛇足。セゾンには西洋環境開発というデベロッパーがありましたね。これまたセゾンらしい会社で。その話はまたいつか!