グレート・バリア・フリー

「このマンションはバリアリーフなの?」

販売中の住戸内を黙って眺めていた、ちょっと素敵で、ちょっとすました奥様。案内に立ち会っていた僕の方を向いて、唐突に掛けてきた言葉がこれだった。

「え、‥?」 僕が固まった時間はおそらく3秒くらい。そしてその「?」が氷解すると同時に、脱力した‥。奥さん、オモロ過ぎ~(声には出ない)。

それ、バリアフリー‥。

バリアリーフと言えば、オーストラリアのグレート・バリア・リーフですが、沖縄エリアにも幾つかあるようです。※barrier reef = 堡礁(ほしょう)《海岸線に並行し、礁湖(lagoon)の海面を挟んで発達するサンゴ礁》(研究社・[かなり古い版]新英和大辞典)

ところで、バリアフリー(barrier free)。不動産業界では、建物の段差などがないという、狭義で用いられています。一方世の中では、社会的、心理的な意味まで含めて広く、暮らすための障害が除去された状態を意味することが多いようですね。物理的な段差だけが暮らしの障害ではない、ということ。

さてマンションの段差(バリア)について。というか、僕が扱うマンションの多くは、そもそも各住戸まで階段が必要。そんな構造(2戸1階段)を暮らしやすい間取りと言って推奨しているわけで。そんな僕がバリアフリーを語るのか!という感じです。

室内の段差は、どの程度まで許容できますか。段差の傾向は建築された時代、床の構造などでいくつかのタイプに分かれます。そして古いから段差がある、段差が大きいという訳でもない。唯一無二の住戸との出会いの中で、何に重きを置くのかという話ですね。なお、段差のメカニズムについて文章だけではややこしく、長くなるのでここでは割愛します。

逆に、やっと見つけたこの物件!あとは段差ね‥。そんな向きには、床からのリフォームで段差解消が可能なこともあります。その場合は床を上げて、壁や建具も全部やり直して、天井や梁下が低くなって(それとも天井壊して高くして)‥と、そこにお金を掛ける価値を感じるかどうか。

上の写真もバリアフリーではなく、浴室の床が上がっています。ここ以外はほぼフラットでした。というか、浴室が上がっているという認識さえ無く‥、慣れって言うか‥。

必要な方には必要な対処を、そうでない方にはそれなりに。将来も(ある程度)見据えながら、自分らしい暮らしと住まいは何かについて、自分なりに考えていきたいですね。

olive,olive,olive!

EST!EST!!EST!!!はイタリアの白ワイン。ある司教がローマへ向かう道中、使いの者が先回りしてうまいワインを探し、軒先にEST!(ここだ!)と目印をするお役目を仰せつかった。特にこれは美味だったため、是非に味わうべしとEST!!!3回で強調したのだ。このワインをいたく気に入った司教は、ローマでの任務が終わるとに直ちに舞い戻り、このワインを幾年かたっぷり楽しみ、最期はこの地に眠ったというお話。うーん、素敵。(実際、墓もあるのだとか)

そういえば、徳川家康はポルトガル伝来のテンプラをたいそう気に入り、食べ過ぎて亡くなった。と子供の頃に本で読んだのですが、そんな話ホンマにあるんかいな。(これ定説?調べたことありません‥)

さて本題はOlive!Olive!Olive!。上はイタリアの町と友好都市を結んでいるという街角で撮った一枚。

ひとつ目のOlive! 約20年前、僕もテラスのプランターにオリーブの木を植えました。細かった幹は太くなり、その後には新入りも増え、新旧仲良く並んでいます。

樹木は一朝一夕には大きくならないけれど、月日の経過を改めて感じさせてくれる。新しく居を構えたら記念に植えてみてはいかがでしょう。景色としても、枝を広げたオリーブは良いものです。

月日の経過と書きましたが、オリーブにとって20~30年なんてまだコドモ。樹齢200や300年は普通なんですって、世紀をまたぐ古木もあると言うのだから‥。我々の忙しい時間軸(忙しいという字は、心をなくすと書きますね)とは全く異なるスケールで生きる樹木を傍らにどうぞ。

ふたつ目のOlive!は食べる、飲む(?)。日々のオイルとしてはもちろん、実を刻む、煮込むなど、少しあるだけで料理が深く、楽しく、美味しく。

Olive三つ目!は使う。愛用しているオリーブの木ベラ(ターナー)。鍋への当たりが柔らかいのに、堅くて丈夫。あのオークより堅いんだとか。オリーブの採取を終えた古木から作られるそうです。経年変化を楽しんでいます。

おまけでもう一つのOlive!オリーブ石鹸!若いころ髪までこれで洗い続けたら、しっとりを通り越してペッタリして‥。アレッポ石鹸はシリア産。拠点を移すと聞いた気がします、どうか‥

ここでは一つ目の、植樹のススメ、を書きたかったのですが、当初から脱線で思いのほか長くなりました。乱文御免!

経年変化、経年無変化

街角でのスナップ。はて、こういう写真もスナップと呼んでいいのでしょうか。

それはさておき、戸建住宅に設置された目隠しの柵です。コンクリート基壇部分とルーバーが新築時のモノなのでしょう。そして後に、継ぎ足すように上部の柵を(おそらく)DIYで取り付けたと思われます。

これ、どうでしょう?この対比。

新品同様に若々しい下段ルーバー、そして早くも時の経過を感じさせる上部木製柵。

永遠の青年と言いますか若づくりの下段ルーバー、いつもキレイ。木粉と樹脂を混ぜた製品が昨今多いですが、その類いでしょうか。ナイスな表情を崩すことがなく、お手入れも簡単そう。経年変化ならぬ経年無変化、とでも言いましょうか。

一方の後付けの木製柵、いい味出てます。お若いのに随分と年季を感じさせる表情ね。しばらくはそのままでもいけそうですが。

僕は木製柵にシンパシーを感じますが、これは好き好きですね。どちらが良いかと議論するようなことでもないし。ただ、その対比があまりにも対照的だったので思わず題材に挙げてしまいました。

木製柵は、適当なところでキシラデコール(商品名です)のような木材保護塗料を塗ってみてはいかがでしょう。ベタッと塗るペンキと違い、木部に浸透する塗料なのでナチュラルです。晴れた日に塗る、それだけ。

それにしても、未来永劫変わらないモノはない。いつも新品のように振舞っていた樹脂製ルーバーも、突然ガクッと‥。経年無変化急激変化。その時は即交換ということですか。

晴れた日に塗料を塗って経年変化を楽しむも、いつもキレイな樹脂製建材を使い切るも、どちらにしても大切に扱いたいものです。

草、はえる

※正面の白い建物は本文中のマンションと関係がありません。近そうに見えますが、約20mの離隔があります。

こちらの面積は約65㎡(約40帖)です。

そうなんですかー、ちょっと小さめ3LDKですねー。

いいえ。専用庭の面積が65㎡です。

マンション室内からの景色と言えば、バルコニー越しに見える借景。でも、庭のある1階や広いテラスのある住戸の景色はそれだけではない。つまり、庭やテラスがあれば自分だけの景色をつくることができるということです。ましてや65㎡もあると‥。

雑草が、はえる。

この庭にはメキシコ原産のアガベ(リュウゼツラン、テキーラの原料です)が葉を大きく広げています。うまく手を入れていけば、この庭に居ながら異国へトリップできそう、という迫力。以前は、中央に伸びるブルーベリーと並んでパンパスグラス(これもアメリカ産、イメージは巨大なススキ)がアガベ以上の威容を誇っていたのですが、これ綿毛がスゴーイのヨ。お隣さんがつらそうなので、僕が住戸のリフォームをする段階で撤去しました。ちょっとだけ残念だけど。

前オーナーは野趣あふれワイルド過ぎる庭がお好きだった様子(僕、アガベは飲む方も好き)。それを、未だ見ぬ次のオーナー(リフォーム済で販売する住戸ですから)のために端部を整え、埋まっていた煉瓦タイルを掘り起こして花壇風に並べました。すみっこには竜のひげ(あのトトロのお土産の‥)も植えて。

果して購入されたのは、やはり草木や土がお好きな方。もっとずっと遠くの山まで家探しに行かれていたようですが、街(の近く)に戻ってこられました。今では、きっとこの庭の様子も大きく変わっていることでしょう。この住戸は室内にも沢山の天然木を使用しており、ある意味、山小屋風でした。それも何かのご縁でしょうか。

それにしても、広い庭は(モチロン広くなくても)雑草がモリモリ。特に夏は容赦ありません。専用庭のある物件を複数抱えていた時(モノ好き‥)には、アーそろそろ(草抜きに)行かないと!と夢に出そうで、でも腰が上がらないという。

という訳で、気合を入れて(!)向き合いたい広い専用庭。手を掛ければ特別な空間になりそうですね。条件の合うマンションは少ないですが、見つけたら少しだけ想像してみてください。

もしも、つくるならさぁ‥

もしも、自分ひとりだけの小さな居場所をつくるとしたら‥。

条件は、手に届く範囲の現実的なもの、そして集合住宅で。としよう。

まずは建物。ピカピカなのは気疲れしそうだから、少し古めのものがいい。外壁が白い塗装で、階数は3~4階建て。帰宅時に自分の居場所を見上げて寂しくならないように、しっかりと造られ、ていねいに管理されていることがわかるものを丹念に探す。入口にはそれと判るキレイに刈り込まれた植え込み、もしくは大きな木が一本あるといいけれど。

面積は45~50㎡程度が希望だが、これが意外と難しい。昭和50年代半ば以降のそれなりのマンションでは、この面積帯がメイン住戸になることは少ないから。小振りな住戸があるとすれば、①メイン住戸と同じ南向きだがEVを抱き抱えた(ために北側の一部が欠けて小さくなった)タイプ、もしくは、②(南向きだけでは容積を消化できなかったためにできた)東西向き住棟にあるタイプ、のどちらかとなる(もちろん例外を見つけるのは楽しい)。僕は後者②の角部屋をできれば選びたい。南は向いていないけれど住戸のカタチは細長でない場合も多いし、たくさんの窓は使い方次第で豊かな空間がつくれそうだ。ただし、面積が50㎡を超えてしまうことが多いけれど。

プランは、既存の間取りを見てから決める。ただし、生活に必要なものを見極めて、最小限で成り立つ居場所がいい。水と火が使えて、道具と食器が少しだけある。そんなイメージで。

内装は、建物の佇まいと違和感なく馴染むようなものを。僕の選ぶ建物からして、簡素な素材、素の材料が似合うと思う。のではあるが、せっかくの秘密基地はアームチェアトラベルで何処へでも何時へでも飛べる‥みたいな空間を設計者と考えたい。もちろんお金は掛けず、アイディア勝負のね!

‥‥

そんな自分だけの部屋なんて、現実味ないなぁと自分でも思う。そんなの夢想だな、と書きながらも考えていたところで思い出した。だいぶ前だが女性のご購入者が、ご自身専用の隠れ家だと仰っていたっけ。お嬢さんには合鍵を渡すけど、と(では、鍵をもらえないのは‥?)。一生懸命はたらいてきたんだし、この部屋はご褒美なのよ‥。確かにその部屋はキュッと小振りで、心が軽やかになりそうな設えだった。そして、家なのだから安いという表現は適切でないけれど、比較的手頃な価格でもあったのだ。

そう思うと、そんな非日常のような日常も比較的身近になってくるのかもしれない、と思ったりする。

武骨な道具

上面全体が鋳鉄製の五徳(ゴトク)でガードされているこのガスコンロ。一見すると業務用かと思うゴツい表情をみせています。でもこれは一般家庭用、しかも国内メーカー製です。

市場に出るほとんどの新製品は、美しいガラストップと華奢な五徳の洗練されたデザイン。家電製品のようにアプリ連携まで出来て、手入れの容易さも進化しているようです。

そんな中、このガスコンロは進化もせずに(細かい改良があるのかもしれませんが)販売が続いています。もう15年位になるでしょうか。いつ生産中止になってしまうだろうと心配しながら、リフォームするマンションにときどき採用しています。あぁよかった、今回もまだ売っていた、と。

この全面を覆うゴツイ五徳は頑丈でフライパンの上下動にも耐え、熱い鍋の行き来も自由。天板はタフなステンレス、ツマミも鋳物(たぶん)。大火力バーナーも備えています。まあ、本格志向の男子が好むデザインとスペック、と言ってしまえばそれまでかもしれませんが‥。

使い続けて味が出る道具たち。長く使ってもヘタレず、傷だらけになって、経年変化に耐えるモノ。

こういうの好む人って、部品交換しながら物理的に使えなくなるまで使い倒す人が多そうです。ちょっとの汚れは気にしないけれど、適度にケアをしながら傷だらけになっていく。ほかに欲しいヤツがないんだよ、って言いながら。

そんな時、敵あらわる!そうです、修理用部品の在庫切れ。‥。もしくは超高額の修理代(買い替えの方が安いぢゃないか‥)。そして新製品への買い替えを勧められるのでした。こっちのほうがエコですし、と。

工業製品の定めですね。クルマも同様です。昨年僕も、約20年間乗り続けた一台をギブアップ。まだまだいけるぞ、という(言える‥)余裕のある方にお譲りしました。トホホ。

でも、旧き(古き?)も良いけど、新しきモノもいいですね。モノにとらわれ(囚われ)ず、モノを扱う。いつでも軸にあるのは、光と風が抜ける暮らしですから。

エントランスホールが欲しいわ

まことに残念ですが、こちらのマンションにはエントランスホールはございません。

残念でした。ついでに言うと、エレベーターもありません。敢えて言おう、なんにもないゾ!

コの字型に配棟された、真っ白な低層3階建て。敷地南東角には小さな提供公園(開発に際して事業者が行政側に提供する公園)があります。いいですね、雰囲気の良い低層マンションの基本形と呼びたいくらい。

僕が何度か言及している2戸1階段、両面バルコニーの物件です。それと、P・P分離ができる中入り玄関の住戸プランになっています。以前に、この中の住戸をリフォーム販売しています。落ち着いたプラン、そして窓外の緑と空が、”低層マンションに暮らしてる感”をいい感じで醸していました。

もう一度言いますがエレベーターはありません。3階建てにEVは必要か、これはビミョーですね。今の新築マンションでは付けるのでしょう。「エレなしマンションとかあり得なーい」って言われますから‥。かといって全部の2戸1階段ごとに、それぞれEVを設置するという根性は、事業者にも購入者にもないでしょう。(※かつて僕は、そんな根性の入った低層マンションに暮らしていましたが、それはもう‥)

なぜ根性が必要かと言うと。事業者にとってはそのすべてが販売価格の上昇として跳ね返ってくる。そして購入者側は「いいのわかるけど価格高いわー、維持管理も高くて無理ムリ」となるからです。要するに、残念ながらそこまでやってもウケないということ。(※EVは買うのも、維持するのも高いのです。)

だからEVを1機だけ置き、2戸1階段ではなく階段は全体で2ケ所程度。そしてEVホールから、各階(といっても3フロアだけだが)の北側にぐるーっと廻した開放廊下を通って各住戸へ。これで全ての導線をセキュリティライン内に置くことができ、エントランスとEV用のホールも必要となるのです。

そんなこんなで、また開放廊下に面した部屋があるマンションが出来上がりました。その開放廊下と玄関・部屋の間には、吹抜けと称するスキマを設けて、プライバシーに配慮したプランとしました、となるわけです。

両面バルコニープランが比較的無理なく出来そうな3階建てなのに、やっぱりEVと開放廊下の誘惑(誰が誰を誘惑するのか?)には勝てないようです。すると写真のようなシンプルな建物が、ますます貴重に思えるのでした。

サッシモンダイ

今回は工事中の写真です。マンションとしては比較的古い(あくまでも”比較”的な古さであり、耐震診断済の堅牢な建物です)この建物、断熱対策をした上でボードを貼ったところです。

初期の集合住宅では、躯体に断熱が施されていない場合が多いため、状況に応じてこのような工事を行います。ちなみに、断熱処理は躯体外側の方がずっと効果的ですが、日本の大部分のマンションは内断熱なんですね。(これは別の機会に‥)

断熱されてなくても、季節に合わせた暮らしを皆さんされてきました。窓を開ければ風が抜けますし、冬の結露も防げます。ですが、暮らしも気象条件も激変する昨今、リフォーム工事は室内環境を整えるいいタイミングです。

いずれにしても、壁が原因の寒暖差はこの断熱処理によって多少緩和されるでしょう。でも実際には、室内環境にもっと大きな影響があるにも関わらず、自分自身だけで解決できないのが「窓」なんです。マンションの場合‥。

殆どのマンションは管理規約において窓・窓枠(サッシ)は共用部分と定めています。共用部分とは区分所有者全員で(持分に応じた割合で)持ち合っている箇所のこと。なお、住戸内は当然自分だけで所有する専有部分です。でも困りますねー、ウチの窓を隣人が(持分の分だけ)使いたいと言ったら‥。そこで、”共用部分の専用使用権”という概念で解決。自分の窓を、専ら自分だけが使うこと(だけ)が出来るのです。パチパチ。なんだかなー

外気から受ける寒暖の影響は、大半が窓経由です。言い換えれば直接に窓・サッシを対策することができれば大きな効果がある訳なのですが、これ(交換)が難しい。というのがマンションの難しい問題。

モチロン、近年分譲された比較的新しいマンションでは窓・サッシも進化していますので、室内環境は良化していることでしょう。でも我らが(?)中古マンションでは、必要に応じて窓廻りの対策も考えたいところです。

そうは言っても実際のところ、多くの方は工夫をして現状のままで暮らして居られるわけです。言い出したら切りがないですものね。

中古マンションを購入してリフォームを検討する際、窓廻り対策は忘れがちです。それに、住んでみないとわからない部分とも言えます。また逆に、(見据えておけば)住んでからでも対策できる箇所でもあります。

あまり完全を求めず、でも窓のことを頭の隅に忘れずに置いておく。それがいいのではないでしょうか。具体的な対策はまたの機会に書いてみます。

あ、最後に。写真右側の壁には穴がたくさん開いています。有孔ボードです。どんなふうに使いましょうか?

ひつじがいる暮らし

この撮影のために、ニュージーランドから羊(のお土産)の皆さんにお越しいただきました。真夏の日本にようこそ!

つまらなくて、すいません。ちなみに写真のカーペットもヒツジ100%、英国産の羊毛を使用しています。同じく英国連邦の国から来た羊さん達をお出迎えです。高価なものではありませんがブリティッシュウール、そう聞くと床材というよりセーターみたいですね。

さて、羊も黙るニッポンの夏、酷暑の夏。なにもウールのハナシを、こんな季節にしなくてもいいのに‥。

マンションの2階以上と言えばカーペットが主流だった昭和の後期。その後、フワフワとした遮音材を貼ったフローリング建材に主役を取って代わられました。軽量衝撃音、つまりスプーンをシャリーンと落としたような音を木製床(?)が抑え込むことができるようになったとも言えます。直貼り遮音フローリングですね。

当時、室内環境の汚染によるシックハウスが大問題となり、関連してハウスダストの温床であると疑いをかけられたカーペットはさらに苦しい立場に置かれたようです。疑義はさて置き、少なくともカーペットがダストの舞い上がりを抑制することは確かです。そのチカラはフローリングの比ではありません。砂漠の民が、激しい寒暖差のある暮らしのなかで生みだしたカーペットですものね。

カーペットのなかでも僕が好きなのはウール素材。その機能性についてはいろいろと語られているので割愛します。夏は暑そうに思えますが、空気層を含んで意外にも素足にサラッとしてベタベタしない。冬は暖かく、夏はそれなりに。僕が好んで使う無染色のナチュラルなカーペットは、畳や無垢フローリングに近い天然素材の仲間という位置づけです。

また、同じ天然素材の床材候補であるザイザル麻と比べても汚れが付きにくいし、チクチクしないので使いやすい。ラフに扱えて、比較的安価なものもあるので貼り替えも容易です。寝室には結構いいと思うんですけれど‥。ひつじ1頭、いかがでしょうか。

窓から見えるものは

日本の住宅は可能な限り南向きです。マンションで言えば、南間口を6m程度確保して細長い箱をズラッと並べるのが基本。あとは地形や法規に従って、たまたま広い南間口が確保できたり、東西向きがおまけで付いたり。また、一部が欠けてルーフバルコニー付住戸となったりするわけです。

見渡す限りビル、マンション、戸建てが続く首都圏の街。ビルは例外として住宅は「南向けーっ、ミナミ!」しています。だから自分が見る景色も建物北側、影ができる面です。素敵な住宅地も半数の住宅は、道路も挟まず南側宅地の背中と向き合います。(敷地が広ければそうでもないのでしょうが、それは無理が‥)

人が集まって住むということは、そういうことなのかもしれません。欧州の街区型住宅では道路に面して東西南北と四方を向く分だけ開放的ですが、それでも結局は道路の向かい側から誰かがこっちを向いて微笑んでいる(気がする)わけですから。

自宅の窓から見たいものは何ですか?青空が見えるならば、その下の建物裏側は気にならないかもしれません。でも街中では、窓で切り取られた景色が建物だけの場合も多いように思います。大規模マンションの中層階もそうですね。

僕は何を言いたいのか。そうです、緑の景色がある低層階住戸はおすすめだということ。レアなケースでは、道路の向こうが公園や緑地であるという恵まれたマンションも探せばあるでしょう。そうでなくても写真のように、ゆったりした敷地に豊かな植栽が計画されている大規模団地もあります。

草木や樹々が視界に広がるのは、せいぜい3~4階程度でしょうか。街の財産である公園緑地、手を掛けて管理された敷地内のグリーン。これらを居ながらに楽しむことができる暮らし、いいですね。そんな住戸を探して、リフォームしてみませんか。