街と森のあいだに

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さてここはどこでしょう?

見渡すかぎりの青と緑、そして白。工事中の風景です。

答えはリゾートマンション? 伊豆か?いや湯河原方面…。

実はここ、都心から電車で約20分の急行停車駅から徒歩10分の場所です。東京から多摩川を越え、目の前に広がる川崎市最大の緑地「生田緑地」に接する高台のマンション。この住戸は緑地から頭ひとつ飛び出ているため、眼前に海原のような緑が広がっています。室内からの視線がウッドデッキを越えて緑の向こうへ抜けていき、まるで森の上に居るようです。

このあたりでは「街と緑のあいだ」と言える場所を見つけることができます。僕が好んで手掛ける「手頃でちょっと楽しい、緑豊かな中古マンション」は、都心に程近いそんな場所にひっそり位置しています。

こんな場所での暮らしはどうですか。虫もいます、いろいろな生き物が暮らしています。上り坂もちょっとキツイ!このマンションは、先の細道が小さな山の頂上広場に続いているんですよ。

他者やコトとの折り合いをつけて、それぞれが自分の価値観に沿って無理なく暮らししたい。僕の手掛ける住戸も万人受けしないのは当然だし、逆にこういうのが好きな人もいるんだな、と流してもらえればそれでよし。でも、こんな住まいと暮らし方がいいな、と思う方と出会えたら嬉しいです。

今回触れた生田緑地、多摩丘陵の端部に位置し都心にも至近の「街と緑のあいだ」といえる場所です。その意味では僕にとってシンボリックな存在と言えます。機会があれば、また広い緑地のなかをご紹介します。

奥多摩の杉

杉無垢床と漆喰壁

「メニアオバ カベニシックイ ユカニスギ」 眩しい新緑と抜ける青空を背景に鯉のぼりが泳ぐ、そんな季節はあっと言う間に過ぎ去っていきました。

独立して間もなく、奥多摩地域にある製材所に出向いたことがあります。「山を育て、樹を伐り、木を運び、製材して木材へと生まれ変わらせる」仕事場を見せていただきました。まさに東京の木、地元産といえる木材を身近に感じた出来事です。

地産地消という言葉、首都圏でも食物に関してはよく耳にします。住宅についても、昔は地元の木材で普請するのが当たり前のことでした。しかし現在、木造でさえハウスメーカーが主流となっているわけで、近年生まれたマンションにとって地産地消は縁遠いものです。高効率に大量の住戸を生み出すコンクリート建物は、規格化された住宅用建材と一心同体とも言えるものですから。

それでも、時を経て少しやわらかく角が取れたような建物には、つるつるぴかぴかな新建材とは違う手触りのある内装が似合うような気がします。だから僕は、僕の手掛ける少し古くなったコンクリート建物の中身に、なんらかの味わいを残したいといつも考えています。

その一つのかたちとして、独立当時から今に至るまで、裸足の似合う気持ちのよい床材として、この地元産杉無垢材を使わせていただいています。

長さ4m、継ぎ目のない杉無垢フローリングが敷き込まれた室内は清々しいほど。それにしても、この長さの床材をマンション室内に搬入するのはたいへんです。EVも階段室も通れません。

どうすると思いますか?このフローリングは1~2階限定です。なんと、ヨイショと窓から搬入します。なんだかまったく効率的じゃないですよね…。

 

集合住宅という響き

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「それで、いけだ君はうちの会社で何やりたいの?」

「集合住宅です、街に小さな風景をつくるような。大規模開発ではなくて…」

「集合住宅って言う? 普通、マンションじゃない?」

「そうですよね。でも自分のなかでは”集合住宅”なんです。」

「?」

これは、翌年入社することになる不動産会社を初めてOB訪問した時の話。時はバブル期、欧米関連部署にいる多忙なOBに「マンションではなく集合住宅ナノダ」と情緒的な主張をしても、「?」となるのは当然であって…。

以来、そんなこんなで集合住宅、もといマンションに一貫して関わってきました。大規模マンションから低層マンションまでを開発し、地域に張り付くマンションギャラリーも開設しました。規模の大小、地域の特性こそあれ、どれも見紛うことなき”マンション”でした。これも当然ですが…。

そして会社を離れ、独立して10余年経ちます。学生時代に夢想した集合住宅像は何処かへ飛んで行ってしまいましたが、独立後に僕が手掛けてきたリフォーム住戸の殆どが昭和末期の建物。どこか落ち着きと暖かみ感じさせる、暮らしやすそうな建物を選んでリフォームしている自分がいます。三つ子の魂でしょうか。

ところで、前掲写真の書籍は植田実著「集合住宅物語」。私が”シュウゴウジュウタク”と知った顔で発声するのが恐れ多いほどの「ザ・集合住宅」ばかり。戦前の同潤会アパートから戦後のヒルサイドテラスまで描かれています。僕が物件化を検討した”マンション”も載っていてニンマリ。

一体、お前の言う集合住宅とはどういうものなのだ?-と言われてしまいそう。でもどこか違うんですよね、マンションと。それはまたいつか。

 

都心を離れて

 

「緑の多い、ちょっと郊外で暮らしたい」

僕(の会社)が売主のリフォーム済マンションにも、都心部からの見学やお問い合わせが普段より目立つようになりました。

例えばこのマンション。セカンドリビングを擁する大空間が緑地/公園に面していて、床は杉無垢材。ちょっと別荘みたいです。

一般的に、マンション選びの際に重視するのは何かと問われれば、一番多い回答は「交通の便」でしょう。でも僕は「緑、そしてマンションのつくり」と答える。駅近であるよりも緑豊かであることを優先したいと考えています。

必然的に、僕がつくるマンションは駅から少し離れることに。ですから見学された多くの方が「内装も環境も気に入ったけど駅距離がねー」となるわけですが、「こういうの探してた!」という方に出会えるのがとても嬉しい瞬間です。

テレワークが推奨されて、自室に閉じこもる生活の中で、皆さん何か思うところがあったのでしょうか。でも都心暮らしの方がここでの生活を決断するのはなかなかハードルが高いのです。だってこの辺りは多摩丘陵の端部、坂道がすごいんですよ!

言い過ぎました…。坂道がすごいとは言っても、慣れてくるものです。今ではすっかりへいちゃらの僕も都心部からの転入組ですから。

 

はじめまして

はじめまして、東京都世田谷区にあるスモールカンパニー”株式会社スタジオカーサ”代表の池田です。
Studio?CASA?設計事務所やるの?写真スタジオですか?、と設立当時にはよく言われたものです。
実はこう見えても(どう見えて?)当社は宅地建物取引業免許を持つ不動産業者。
へんなの。
そうなんです、へんなの。
どうしてこんな会社名になったのか、一体何をしているんだ!
それは今後、折に触れてお伝えしていくつもりです。
以後、宜しくお願い致します。

↓ 株式会社スタジオカーサのWebsiteは ↓

http://studiocasa.co.jp